第三章
間話 処刑
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み付いた。私はあのような態度を取る気は毛頭ない」
見苦しい態度……確かにそうだったのかもしれない。
しかし、それでも――。
タケルには、あのときのオオモリ・リクの態度は自然で、今のヤハラの態度はひどく不自然に思えた。
納得がいかなかった。
もっと生に執着してほしかった。
総裁にしっかり弁明をして、死刑を免れ……そして扉を出てきてから、自分に向かって「お前のせいで」と罵倒してほしかった。
そのほうがどれだけ救われただろうか。
「あなたがそうでも、僕はあなたが処刑されるのは耐えられません。僕に今まで指導してくれたのはあなたです。生きていて欲しい。生き延びてもらえるのなら……あなたがあの人間のような態度を取ってもまったく構わなかった。見苦しいとも思わなかったと思います」
「タケル。私はそのようなことをお前に教えてきたつもりはない。それは危険な思想だ」
「……」
ヤハラにぶれる気配はない。このままおとなしく死ぬ気なのだ。
タケルは、全身から力が抜けていくように感じた。
膝は支えを失い折れ曲がり、その場で両ひざをつき、両手をついた。
「申し訳ありません……僕のせいで……」
「私はお前のせいなどと言った覚えはない」
「……」
「お前はおそらく極刑を免れるだろう。後は頼んだぞ」
付き添いの人間の、「牢に案内します。一緒に歩いてください」という声とともに、ヤハラは去っていった。
――なぜですか。
真の人間というのは、生きることに執着してはいけないのですか。
そして他の人間に対し、見苦しくてもよいからもっと生きていてほしい、と願うことも……。
しばらくタケルは、その場で動くことができなかった。
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