思わぬ出会い
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そんなアンバランスな第一印象は、リアナに興味を抱かせるに十分であったが。
それ以上に――その名前はいつか出会いたいと思っていた。
話題にあげたカプチェランカの英雄――そんなことは、軍にいれば山の様に作られる一瞬であったかもしれないが――彼の装備企画課でのわずか半年の功績は、リアナだけではなく、多くの企業では一時期に話題に上った。
即ち、アース社を手玉に取ったと。
年々強くなるフェザーンの攻勢に、収益を落としていた自由惑星同盟の企業の多くは、アース社の踏んだドジばかりに目を向けて、彼の名前自体は大きくはなっていない。
だが、リアナと――そして、一部の企業では彼の名は、ある意味――軍での英雄以上の価値を持っていた。
優秀だと。
実際に既に一部では引き抜きを行う動きもあったらしい。
もっとも、彼にとってはわずかな心すら動かないものであったのかもしれないが。
そんな人物と話せる機会は――娘のことを抜きにしても――夫に感謝すべきだろう。
リアナから服とネックレスを奪い取って、部屋に戻った娘。
士官学校でよほどのことがあったのか。
気にはなったが、それ以上に目の前の人物が気になる。
ある意味、彼女も娘と同様に自らの意思が優先される企業家であるのだろう。
「お忙しかったのではないですか」
「いえ。むしろアロンソ中佐の方がお忙しいのでは」
「この人は仕事が大好きな方ですから」
「……ひどいな。それは君も同じだろう」
並べられた食事前のお茶。
湯気の立つ紅茶を口にしながら、アロンソが渋い顔を見せた。
そんな様子に、リアナは同意をする。
「同じ趣味を持つというのは、仲の良い秘訣ですか」
「かもしれませんね」
アレスの言葉に、リアナは小さく笑いながら、すっと視線をあげた。
「ところで。お聞きしたのですが、アース社の件は見事なものだったそうで」
片眉をあげたのはアロンソだった。
アロンソにとっては、装備企画課での詳細など聞いてはいない。
むしろ、軍でも知るものは少なく――どちらかといえば、民間の方が話題に上るのかもしれない。
アレスは表情を変えずに、紅茶を口にした。
「よくご存じですね」
「それは――軍はお得意様ですから。情報は取るようにしておりますの、特に優秀な方の情報は」
「セレブレッゼ少将とかですかね」
笑いとともに口にした言葉に、リアナは眉をさげた。
「あの方にもずいぶんと泣かされたものですわ」
「でしょうね」
「ですが、今回のアース社はマクワイルド様に泣かされたようですね」
「尻尾を切って終わりでしょう。それに」
アレスは小さく言葉にした。
リアナが言葉を待つ。
「まだまだ手加減をした方ですよ。いま、アー
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