思わぬ出会い
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をお見せした」
「いえ」
頬をかいて、アレスは言葉を否定する。
ライナの行動を考えて。
「アロンソ中佐のお嬢さま――ライナ候補生は私の士官学校時代の後輩だったのです。油断していたところで、知り合いにあったので驚いたのでしょう」
「見苦しいことをお見せしました。ライナが慌てるなんて、珍しいことで。でも、本当に申し訳ないわ――いつもはあんなはしたないことはしませんのよ」
軽やかな鈴のような声は、階段から降りた女性によるものだ。
まだ若くも見える奇麗な顔立ちは、よく見れば目鼻立ちはライナに似ている。
しかしながら、あまり感情を見せないところはアロンソに似たようだ。
整った表情が楽しげにほほ笑む様子は、非常に魅力的であり、人間味を帯びていた。
「気の抜けたところを見られたくないというのは、彼女らしいところですね」
そもそも彼女が化粧していないところは、初めて目にした。
士官学校ではきつい化粧は禁止されているものの、社会人のたしなみとして自然なメイクは許可されている。
一切隙のない彼女が、油断した様子は初めてのことで。
「少し驚かせ過ぎたようですね」
そんなアレスの様子に、目の前に現れたライナの母親も笑みを深くした。
目の前まで近づいて、丁寧に――スカートの裾を手にして、美しく礼をする。
どうやら彼女の礼儀正しさは母親によるところのよう。
「ライナのことをよくご存じなのね。申し遅れました――ライナの母親のリアナ・フェアラートと申します。この度の主人ともども、娘もお世話になったようで、感謝いたしますわ」
「お世話になったのは、むしろこちらの方です。アレス・マクワイルドと申します」
よろしくと差し出された細い手を取って、挨拶を返す。
アレスの手を握りながら、リアナは少し思案を浮かべ、だが瞳はアレスを見返した。
「アレス。アレス・マクワイルド――名前はお聞きしていますわ。カプチェランカの若き英雄とお会いできて、嬉しく思います」
「あの地の英雄は山の様にいますよ。私はただ生き残っただけにすぎません」
「生き残ることこそが、英雄の前提条件だと思いますわ。ようこそ――歓迎いたします、マクワイルド様」
+ + +
アロンソが連れてきたマクワイルドという人物は、リアナ・フェアラートにとっては驚きと喜びがあった。
少し怖い目つきを除けば、端正と言っても良い顔立ち。
若干くすんだ金髪は、目立つことなく――だが、はっきりと顔立ちを強調していた。
鼻先にわずかに残るやけどに似た傷が印象的な、若い戦士と言った顔立ちだ。
だが――不思議なことに、その身や動作はどこか軍人よりも自らに近い雰囲気を持っている。
即ち、民間企業としての、それも優秀な企業人だ。
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