思わぬ出会い
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情を浮かべた。
答えを間違えただろうか。
疑問を感じれば車が止まり、執事らしき男性が見事な手並みで、助手席と運転席の扉を開けた。
屋敷の巨大な扉の前では、これも雇われているメイドらしき女性が頭を下げている。
前世を含めても、人から頭を下げられて家に入ることなどなかっただろう。
むしろ前世では嫌がられながらも、頭を下げて何とか入り込んだものだ。
そんなことに懐かしさを感じながら、先頭を歩くアロンソに続けば、扉の前でアロンソが立ち止まった。
何だろうと疑問を浮かべれば、アロンソが背後を振り返ってこたえた。
「少し待ってくれ。いま娘が出迎えに来る」
「わざわざ申し訳ございません」
「気にするな。士官学校でも軍でも後輩なのだから。無駄に緊張しないでくれ。ただ」
「――?」
「少し気難しいところがあるからな、悪くは思わないでくれ」
アロンソの娘らしいと小さく笑えば、扉が開くのと同時に、聞き覚えのある――だが、非常に硬質な声が聞こえた。
「いらっしゃいませ――歓迎いたしますわ」
静かだが、まるで冷気すら感じられる冷たい言葉。
だが、間違いなく聞き覚えのある声に。
「ライナ候補生?」
アロンソの脇から顔を見せて、屋敷の中を見れば――いつもの完璧な様子とは違い――どこか気を抜いたような恰好をしているが――見知った後輩の姿があった。
名前を呼ばれて、冷静な表情に疑問が浮かんだのは一瞬。
アレスと顔を合わせれば、表情を崩して、目と口が大きく開いた。
「え……」
と、もれた声は、開けた口とは反対に小さく。
怪訝に顔をひそめるアロンソの隣で、一瞬早く硬直から立ち直ったアレスが小さく笑いかけた。
「珍しいところであうな。今日はよろし――」
見知った顔にどこかほっとしたアレスの言葉に、ライナの硬直も解かれた。
刹那。
巨大な扉が風切り音を残して、閉まり――アロンソの鼻をしたたかに打ち据えた。
+ + +
「だ、旦那様!」
慌てたように中から扉が開けば、メイドらしき女性がアロンソに駆け寄った。
だが、扉を閉めた当事者は既に足音を残して、階段を駆け上がっている。
「ライナ――!」
戸惑ったような声は階段の途中で、振り返る女性によるものだ。
しかし、彼女の声は届かず、女性の手から濃紺の布をひったくるように手にしたまま、階段の上に消えると、ばたんと扉が閉じられた音がした。
自らの手元と消えた背に視線を往復させる女性。
そこから視線を外して、隣を見れば――幸いなことに、顔を抑えるアロンソの鼻は無事であったようだ。
痛みというよりも、むしろ戸惑いさえうかべて、アロンソは顔をあげる。
鼻が少し赤くなっている。
「み、見苦しいところ
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