第十五話 『艦娘』という存在
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
「『アイツ』の本気の戦闘」
そう漏らす川内が指さす先、広大な海の上を疾走する駆逐艦ーーーー『初霜』が、そしてそれを追尾する無数の敵艦載機の姿があった。
「初霜さん?」
「ここからじゃ聞こえないよ?」
凰香の言葉に川内が冷静なツッコミを入れてくる。
そんなことくらいわかっているが、今はそれどころではない。防空棲姫のような防空駆逐艦や対空に特化した艦娘でない限り、駆逐艦が艦載機相手では不得手なのは知っているはずだ。
そんな駆逐艦にあれだけの艦載機が襲ってきたらひとたまりもない。
「今、初霜に無線を飛ばしちゃだめだよ。それに気を取られて集中放火されちゃひとたまりもないからね」
川内の鋭い言葉に、口元に近付けていた無線が止まる。
確かに今の初霜は敵の弾を回避することで精一杯のハズ。ここで無線を飛ばして変に動揺させてしまったら、それだけ被弾のリスクが高くなる。
それに海上だ、被弾した後すぐさま助けに行ける人員もいない。
そこまで考えた凰香は、ふと疑問に思う。
「長門……長門さん達は何処に行きましたか?」
「最初にあった爆撃、それを受けたのが長門。敵艦載機の爆弾から駆逐艦を守って大破さ。その後、追い打ち気味に現れる艦載機に迎撃を行うも、長門以下模擬戦闘組も中破以上に追い込まれたんだよ。そして、唯一無傷の初霜を殿に撤退ってわけ。まぁ、初霜自身撤退する気はないみたいだけどね」
凰香の疑問に川内がそう答える。旗艦大破及び僚艦に深刻な損害で戦闘続行不可能、唯一無傷の初霜を殿に撤退というわけか。
駆逐艦一人を残して撤退って何考えているのだろうか? いくら援軍が来るとは言っても初霜に艦載機の餌食に成れと言っているようなものだ。
「いやー、初霜は心配をする必要ないよー」
「……どういうことですか?」
凰香の問いに川内が海上を指差す。
川内の指の先に視線を向けると、敵の掃射を紙一重で躱す初霜の姿。避けた弾が無数の水柱を上げて彼女の視界を遮り、そこに無慈悲と言える機銃の掃射、及び爆撃が行われる。しかし、そんな回避不可能といえる弾幕の中を初霜は踊る様に身を翻し、それを避けていく。よく見ると彼女の服には一つの弾痕も、汚れもついていない。
あれだけの数の艦載機を相手にして、一発も被弾していない。防空棲姫のような防空駆逐艦などではない、対空装備を持っただけのただの駆逐艦が、だ。
そんな異常と言える回避で敵の攻撃を全て避け切った初霜は、上空の敵目掛けて砲門を向ける。しかし、彼女は演習用のペイント弾しか撃てない筈。おそらく牽制のための射撃だろう。
すると初霜の砲門からペイント弾が放たれた。
ーーーードォォォ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ