第十五話 『艦娘』という存在
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の言葉に二つの『了解しました』という報告を受け、取り敢えず曙と潮が目撃された海岸に向かう。
頭上では瑞鶴を始めとした空母達の艦載機による本気の掃討が始まっているためか、艦載機の羽音や機銃による発砲音、そして天龍が艦載機をぶった斬った時の同じような爆発音があちこちから聞こえ始めた。
それを確認した凰香は『もう一つの無線機』を取り出す。
「……榛名、夕立、そっちの様子はどう?」
『凰香さんの予想通り敵機動部隊の他に戦艦ル級一、重巡リ級二、軽巡ホ級二、駆逐イ級一の奇襲部隊がいました』
凰香の言葉にこの場にいない榛名の声が無線機から聞こえてくる。
榛名と夕立は現在鎮守府近海に出撃している。凰香が『敵による襲撃』と『撃破しにきた艦娘を奇襲する』という最悪の場合を予想し、念のために榛名と夕立を出撃させておいたのだ。
結果、凰香の予想通り敵機動部隊と奇襲部隊が潜んでいたので、凰香の方が先手を打つことができた。
『凰香さん、全部沈めてもいいっぽい?』
「もちろんです。叩きのめしなさい」
『『了解』』
凰香の言葉に榛名と夕立がそう返すと、通信が切れる。今の二人の実力なら深海棲艦の奇襲部隊など敵ではない。
凰香は無線機をしまうと再び移動を始める。すると倒壊したテントの隙間から一人の少女がこちらに背を向けて立っているのが見えた。
凰香はテントの残骸の脇を抜けて彼女に近付くと、そこは一直線に海岸に面しており、そこから工厰近くの海が一望出来る小高い丘であった。しかし、一望出来るゆえに敵から狙われやすい場所でもある。
そんな見晴らしの良すぎる場所で、演習の時に見た忍者のような意匠のオレンジと白の服に黒いスカート、そして首元に白い布を巻きつけた艦娘が海を眺めていた。おそらく彼女が川内だろう。
「……あなたは川内さんですか?」
「おっ、提督じゃん」
凰香の問いに艦娘ーーーー川内は呑気な声色で手をヒラヒラとさせる。
緊張感がまるで感じられない。今がどういう状況が分かっているのだろうか?
何にせよ、ここで避難させた方がいい。
「取り敢えず、私が今からいうルートを使って避難してください。いいですね?」
「えーっ、嫌だよー。今良いところなんだからさぁー」
避難を指示する凰香に、あろうことか川内はその指示に逆らってきた。
今のどこが良いところなのかさっぱりわからない。
「ふざけたことを言ってないで、さっさとーーー」
「提督も見たら? あんまり見れるもんじゃないよ?」
さっさと避難させようとした凰香の手をすり抜け、川内は意地悪っぽく笑みを浮かべながら海を指差した。
それにつられて凰香も海に視線を向ける。
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