第三章
第32話 絆の再始動
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殴られたときの打撲も、我慢できないほど痛いわけではない。
俺は先生と巫女に何度もお礼を言い、退院した。
帰りは馬車を使った。
カイルや女将軍、兵士たちと一緒なので、かなりにぎやかだった。
だが俺はというと、これから国王に怒られるということで気分は沈んでいた。
すぐに城についた。宿泊していた部屋に入って荷物を置く。
そしてなかなか国王の部屋に行く覚悟が決まらず、部屋をウロウロしてしまう。
カイルがベッドに座り、足をブラブラさせながら、俺を見てニヤニヤしている。人の気も知らずに気楽な奴め。
ふと、入口横にいるクロに視線を移す。
何やら物言いたげにこちらを見ていた。
何だ?
そう思っていたら、コンコンとノックの音がした。
爺かな? 早く来いという催促か。
はーい、と適当な返事をして扉を開けた。
「リク! 心配したぞ」
「――!?」
勢いよく、ボフっと抱きつかれた。
現われたのは、国王本人だった。
クロの微妙な態度の理由はこれだったか。
「カイルから聞いたぞ。襲われたそうだな。無事でよかった」
「あ、すみません。ご心配をおかけしました」
身長差があるので、抱きつかれると、俺の胸に顔が埋まるようなかたちになる。
背中に回された手が、かなりきつく締められていた。本当に心配してくれていたようだ。
しかし、事前に聞いていた話と少し違うような。
「あのー。その筋からの情報では、ご立腹だと聞きましたが」
そう。国王の叔母という関係筋から聞いた話だ。
国王は顔をこちらの胸から離し、俺の顏を見上げる。
「当たり前だろ。余を心配させた時点で重罪だ」
「申し訳ありません。でも、怒っている相手に抱きつくわけですか」
「余はお前と違って寛大だからな。いきなりプッツンしたりはしないぞ?」
「遺跡での件ならもう勘弁してください。あれは黒歴史入りです……」
あれはもう、忘れたい思い出。
「……いいなあ陛下は。兄ちゃんに抱きついても文句言われないしさ」
カイルが横でボソッとつぶやいた。
国王が俺からいったん離れ、彼のほうを向く。
「お前は言われるのか?」
「オレが抱きつくと文句言われます。『あまりくっつくな』って」
「リク、お前ひどいな。相手の地位によって態度を変えるのか」
「そう言われましても。陛下に文句を言うわけにはいかないでしょう」
「どちらにも文句を言わなければ平等ではないか」
「なんでそっちのほうに合わせるんですか……」
「よしカイル、余が許可する。今後も堂々とリクに抱きつくがよい」
「へへへ、ありがとうございます。じゃあ早速」
ボフッ。
「……」
「うんうん。このニオイこ
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