第三章
第32話 絆の再始動
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「五行説」に対応しており、司る方角があったり、季節があったり、それぞれの霊獣が意味を持っていたと記憶している。
あの白い犬の像も、祀られている以上は何か意味があるのではないか?
「霊獣様は、豊穣の神だとされてますよ」
「……へえ。豊穣か」
自分としては、犬が豊穣の神ということについては特に違和感がない。犬は鹿やイノシシを追い払い、作物を守る大事な役割があったと聞いていたからだ。
しかし、豊穣の神として祀られているのであれば、使役犬の文化だってあってもよいのではないか? と思う。
なぜこの時代では、犬と人間の絆がないのだろう。
「でも、不思議ですよね」
「ん? 何が?」
「クロさんと言いましたよね。とてもお行儀がよくて、リクさんの言うことをしっかり聞くじゃないですか?」
「ああ、そうやって躾けられているからね」
巫女が目を丸くした。かなり驚いた顔だ。
「犬を躾けるなんてできるんですか?」
「そりゃできるよ。仔犬のときから訓練していればね」
「へー! そうなんですか?」
「そうなんだ? ビックリだなー」
なぜか、カイルも驚いている。
そうか……。
この二人の驚きようを見て、納得した。
この時代の犬は、恐ろしい対象か、もしくは畏れ多い対象であり、親しむ対象ではないのだろう。飼いならすなどという発想自体がないのだ。
誰の指示だったのか知らないが、神社に像なんて作って、下手に神格化したのがいけなかったのでは? と思ってしまう。
かえって再家畜化のブレーキになっている可能性があるような気がする。
「訓練って、誰がやってもよいのでしょうか?」
「誰がやっても大丈夫だよ。失礼にはあたらないはずだ。
犬にとっても、人間と親しくすることは嬉しいことなんだ。俺はここの国の出身じゃないんだけど、俺の国では、家を守る犬、畑を守る犬、人間の獲物を捕まえる犬、目が見えない人間を補助する犬、いろんな役割を持つ犬がいた。家族の一員だと考えていた人も多いんじゃないかな」
「私もやってみましょうかね? たまに、はぐれた野犬の仔犬を見つけるので」
「いいと思うよ。ちゃんと餌をあげて、優しく厳しくやれば大丈夫だと思う」
この世界は、ずっと未来の日本だということがわかっている。
ということは、そこらじゅうにいる野犬は、実は文明崩壊前の飼い犬の子孫であるということになると思う。
成犬は無理としても、仔犬の頃から上下関係をはっきりさせて躾ければ、飼い馴らすことはできる――そう思っている。
危険もあるだろうが、バイタリティが十分ありそうなこの巫女なら大丈夫だろう。
***
検査の結果、縫合した傷も含め、特に問題となるところはなかった。
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