英雄ヴィレント
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り合う。
何合も何合も、私達は剣をぶつけ合い、火花を散らした。
兄の剣は何度か、赤い剣をすり抜けて私の体を捉えそうになったが、その度にネモの制御する赤い盾が、的確にそれを阻んだ。
私の赤い剣も、何度か兄を捉えそうになるが、惜しいところで回避される。
……凄い!
私は興奮していた。
予想を遥かに上回る、兄の強さに。
あの兵団長ローラントなど、問題にならない強さ。
これだけ打ち込んでも、掠りもしない反応速度。
魔の谷での戦いの時は、私は何十人もの相手を同時にしながら、殆ど反撃をもらわずに立ち回ることができた。
だが、これは1対1の戦いなのに、あの時以上の恐ろしさがあった。3枚の盾がなかったら私はとっくに死んでいる。
これがベスフルで"英雄ヴィレント"と呼ばれた、兄の強さなのだろう。
互角の条件で戦っていれば、多分、私に勝ち目はない。
だが、それでもいい。私の目的は、兄の強さを超えることなどではないからだ。
そして、決してまったく届かない強さではない。剣を交えながら、私はそう感じていた。
今は、ネモと2人でこの人を倒す。
ただそれだけを考えて、ひたすら全力で剣を振るった。
兄の何度目かの反撃。
私の剣と剣の間を縫うようにして、強烈なカウンターの突きが私に襲い掛かった。
「ひっ!?」
あまりの勢いとスピードに、思わず声が漏れる。それは正確に、私の首元を狙って繰り出されていた。
本来は防げるはずのないタイミング。しかし、赤い盾はそれにさえも瞬時に反応し、真っ向から突きを受け止める。
恐怖に体が一瞬凍り付く、それほど恐ろしい突きだった。
ふう……
命拾いした。胸を撫でおろす。だが──
「避けろ、チェント!!」
ネモの上げた声に反応し、反射的に体をそらす。
次の瞬間、兄の右手で繰り出された剣は盾を真っ二つに割り、私の元いた場所に突き出されていた。
私の魔力で鉄のような堅さまで強化されたはずの盾をバラバラに。
割られた盾は地面を転がり、光を失ってただの木の盾に戻った。
「まず1つ目」
あくまで落ち着いた声で、兄が呟く。
私は後ろに大きく跳び、仕切りなおすために距離を取った。
盾を見ると、中央の浮遊石が粉々に砕かれている。
私は悟った。
本来は攻撃を受け流して相手の力を反らすはずのこの盾の守りを、兄は盾の中心を的確に何度も突くことで、受け流しを封じて盾そのものを破壊まで導いたのだ。
しかも、その間の私の攻撃を全てかわしながら。
その技量には感服するしかない。
これが、英雄ヴィレントの実力。
「チェント! 大丈夫か!?」
心配そうなネモの声が響いた。
こんな形で盾が破られることなど、彼にとっても予想外だったのだろう。
そ
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