暁 〜小説投稿サイト〜
Evil Revenger 復讐の女魔導士
英雄ヴィレント
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
り合う。
 何合も何合も、私達は剣をぶつけ合い、火花を散らした。
 兄の剣は何度か、赤い剣をすり抜けて私の体を捉えそうになったが、その度にネモの制御する赤い盾が、的確にそれを阻んだ。
 私の赤い剣も、何度か兄を捉えそうになるが、惜しいところで回避される。
 ……凄い!
 私は興奮していた。
 予想を遥かに上回る、兄の強さに。
 あの兵団長ローラントなど、問題にならない強さ。
 これだけ打ち込んでも、掠りもしない反応速度。
 魔の谷での戦いの時は、私は何十人もの相手を同時にしながら、殆ど反撃をもらわずに立ち回ることができた。
 だが、これは1対1の戦いなのに、あの時以上の恐ろしさがあった。3枚の盾がなかったら私はとっくに死んでいる。
 これがベスフルで"英雄ヴィレント"と呼ばれた、兄の強さなのだろう。
 互角の条件で戦っていれば、多分、私に勝ち目はない。
 だが、それでもいい。私の目的は、兄の強さを超えることなどではないからだ。
 そして、決してまったく届かない強さではない。剣を交えながら、私はそう感じていた。
 今は、ネモと2人でこの人を倒す。
 ただそれだけを考えて、ひたすら全力で剣を振るった。
 兄の何度目かの反撃。
 私の剣と剣の間を縫うようにして、強烈なカウンターの突きが私に襲い掛かった。
「ひっ!?」
 あまりの勢いとスピードに、思わず声が漏れる。それは正確に、私の首元を狙って繰り出されていた。
 本来は防げるはずのないタイミング。しかし、赤い盾はそれにさえも瞬時に反応し、真っ向から突きを受け止める。
 恐怖に体が一瞬凍り付く、それほど恐ろしい突きだった。
 ふう……
 命拾いした。胸を撫でおろす。だが──
「避けろ、チェント!!」
 ネモの上げた声に反応し、反射的に体をそらす。
 次の瞬間、兄の右手で繰り出された剣は盾を真っ二つに割り、私の元いた場所に突き出されていた。
 私の魔力で鉄のような堅さまで強化されたはずの盾をバラバラに。
 割られた盾は地面を転がり、光を失ってただの木の盾に戻った。
「まず1つ目」
 あくまで落ち着いた声で、兄が呟く。
 私は後ろに大きく跳び、仕切りなおすために距離を取った。
 盾を見ると、中央の浮遊石が粉々に砕かれている。
 私は悟った。
 本来は攻撃を受け流して相手の力を反らすはずのこの盾の守りを、兄は盾の中心を的確に何度も突くことで、受け流しを封じて盾そのものを破壊まで導いたのだ。
 しかも、その間の私の攻撃を全てかわしながら。
 その技量には感服するしかない。
 これが、英雄ヴィレントの実力。
「チェント! 大丈夫か!?」
 心配そうなネモの声が響いた。
 こんな形で盾が破られることなど、彼にとっても予想外だったのだろう。
 そ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ