第6ヶ条
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服姿を妄想するハッピー野郎と別れ話をされるのではという悪魔の激しいせめぎ合いが始まっていた。
脳内での戦いが始まって5分後、ハッピー野郎が攻勢を仕掛けていた頃に俺の目の前に悪魔も黙り込む清涼感を纏った美少女が小走りでこちらに向かってきた。
「ヒナオ君、こんにちは。急にメールしたのに来てくれてありがとう」
「…淡い水色のワンピースにサンダル。大きな麦わら帽子。…天使だよ、天使」
「え…?」
うわああ。心の声がそのまま垂れ流しになってしまっている。夏休み初日に会って初めての第一声がこれとは世の全女性が引いてしまうレベルだよ。
「いやいや。私服姿の美森なんて初めて見たから少し感動しちゃってね」
照れながら弁明する俺の言葉を聞き、美森も少し赤い表情を浮かべた。
「褒めてくれているんだよね。ちょっと恥ずかしいけど嬉しいよ」
「暑いし、中に入る?」
「うん」
俺が先に図書館の中に入り、美森がこれに続く。最近はこの距離感がつかめてきた気がする。美森はいつもの通り俺の少し後ろを歩いている。
「ちょっと待って、ヒナオ君」
図書館のロビーで突然歩みを止められた。
「…話をしたいことがあるの。少しソファに座らない?」
神妙な面持ちで提案をしてきた美森を見て、俺の表情が固まった。やはり、やはりなのか。
隣同士でソファに腰を掛けると、美森は麦わら帽子を膝の上に置き、小さく息を吐いた。
「ヒナオ君、ごめんなさい」
俺の心臓が5秒間止まり、そしてドクドクと早く脈を打ち始めた。恐る恐る隣を見ると、美森はギュッと目をつぶって下を向いていた。
なんて早く儚く散っていく青い春なんだ、と俺は覚悟を決めた。
「いや、そんなことは…。」
「私っ、ヤキモチをやいてしまっていたのっ」
突然かつ想像をしていなかった告白だった。
「ヤキモチをやいてしまって、どうヒナオ君の顔見ればいいのか分からなくなって。変な態度とっちゃってしまってごめんなさい」
「え、…ヤキモチ?」
「うん。ヒナオ君が友達と仲が良いのは嬉しいことだと思っているし、分かっているんだけど。すごく、その、羨ましいって、そう思っちゃって」
なんとなく花陽のことを指して言っているんだと察した。
「女の子はこういう時でも気にしないで笑っておくものだと考えていたんだけど、けど、私初めてで。…その、こう羨ましいって思っちゃうのが。それで変な態度とってしまったからどうしてもヒナオ君に謝りたいって思ったの」
俯きながらワンピースの裾を掴む美森の姿とその言葉に俺はKOされた。好きな女の子からヤキモチをやかれることがこんなに嬉しいものだと知らなかった。
数分前まで俺の
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