199部分:第十三話 命を捨ててもその十一
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第十三話 命を捨ててもその十一
「それぞれの中でな」
「それが人の心ですか」
「私もまたそうなのだな」
自分自身に思いをやった。ここでもだ。
「今もまさにそうだ」
こう言ってだ。そのうえで。
「では。今からだ」
「この庭園を去られますか」
「私の部屋に行こう」
王の部屋、そこにだというのだ。
「そして。ワインを飲みながら話そう」
「陛下、それは」
ホルニヒは顔をあげた。そのうえで王に言った。
「私の様な者が」
「王の部屋に入ってはならないというのだな」
「そうです。恐れ多いことです」
「いいのだ」
だが、だった。王はそれはだ。構わないというのだった。
それが何故かもだ。王は今話した。
「私がいいというのだからな」
「だからですか」
「この程度の自由もあるのだ」
「自由がですか」
「自由が許されるなら。使いたい」
王は言う。その自由についても。
「篭の中の鳥でも。鳴くことやその中を動くことはできるのだから」
「では今より」
「行くとしよう。それではな」
「わかりました」
「立つのだ」
まだ片膝をついているホルニヒに立つように告げた。
「いいな、立つのだ」
「わかりました。それでは」
「立ちそしてだ」
どうするかはだ。もう決まっていた。
「私の部屋に入ろう」
「有り難く。お受けします」
ホルニヒは一礼してから立ち上がった。そのうえでだ。
二人で王の部屋に向かうのだった。王にとってもホルニヒにとっても。これは運命の出会いだった。そうして一夜を共に過ごしてから。
身なりを整えた王はだ。部屋のソファーに座ってだ。
向かい側の席にいるホルニヒに対して言った。彼も身なりを整えている。
もう朝になっていた。その朝日を感じながらだ。王は彼に話した。
「朝だな」
「はい、夜が終わるのは早いですね」
「夜は。いつもすぐに終わってしまう」
王は悲しい顔で話す。
「朝はそれに対してだ」
「すぐに来ると」
「そうだ。夜が永遠であればいいのにな」
悲しさがだ。さらに増していた。
「しかしそうはならない」
「何故夜がお好きなのですか?」
「月の光がある」
まずはそれだった。月光だというのだ。
「太陽の様に何もかもを照らし出すのではなくだ」
「そうした光ではなくですか」
「月の光は。優しく、そこにいるものを包んでくれる」
王は月光をそう見ていた。最早姿を消したその光をいとおしく思いながら。そのうえでホルニヒに対して今話すのだった。
「だから好きなのだ」
「そうだったのですか」
「そしてだ。人々の多くが寝静まる」
今度は夜についての言葉だった。
「企みや噂や醜聞も。そこにはない」
「夜には」
「あるのは清らかな静けさだ」
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