49話:フェザーンの日々
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ボンボンどもの火遊びが終わって助かったという所だろうか......。
「これで門閥貴族の中でもブラウンシュバイク家とリッテンハイム家を中心とした一門には、太いパイプが出来たはずだ。折衝の場では話を振られることも増えると思うが、期待して良いかな?」
「は。共同で事業を進めるパートナーになるのはご容赦頂きたいですが、あやし役ならばご安心頂ければと。コツをつかめばお客様としてこれほど楽な相手はございません」
俺がそう言うと、ワレンコフ首席補佐官が笑いながら、うなずいた後に退出を命じられる。しばらくは厄介事に巻き込まれることもないだろう。久しぶりに歓楽街の高級クラブにでも顔をだしてみるか。うまい酒が飲めそうだ。
宇宙歴778年 帝国歴469年 8月下旬
フェザーン自治領 酒場ドラクール
ヤン・タイロン
懐かしさに似た思いを感じながら、だいぶご無沙汰していたドラクールの少し重めのドアを開く。進んでいくとマスターがグラスを磨いているのが見えた。白髪が増えていたがまだ現役でいてくれたようだ。私の事も覚えていてくれたらしい、少し会釈してから、VIPルームへ向かう。
亡くなった妻の親族に、息子のウェンリーの親権を奪われそうになり、一緒に星間交易船で宇宙を駆け回る生活を初めて5年。ザイトリッツ様との取引があったからまだマシだったが、急激に資源価格と資材価格が上昇し高止まり傾向が続いたことで、かなり商売がやりにくい状況だった。同盟領内の経済活動は停滞気味だったように思う。商売を変える同業もいたほどだ。同じく懐かしさを感じる通路を抜けて、部屋に入る。やはりと言うか、コーネフさんは先着されていた。懐かしい顔との再会に、自然に私も笑みがこぼれる。
「コーネフさん。お待たせしました。久しぶりですがフェザーンは変わらず活気がってよろしいですね。明るい話が多いので、元気がもらえる気がします」
「いえいえ。ただ、ここ数年、資材価格が高止まりしたままでしたからね。独立商人も変化に対応する才覚が試されましたよ。お互い、帝国への機械輸出の収益が無ければ、かなり大変な舵取りをすることになったでしょうな」
コーネフさんの言う通りだが、ビジネスとは言え少し胸が痛む部分もある。この話を依頼されたザイトリッツ様は今ではリューデリッツ伯となられ、同盟側でも帝国軍有数の指揮官の一人として認識されている。大敗を喫したイゼルローン要塞攻防戦でも大きな役割をされたらしい。
商談の相手としては文句の付け所がない方だが、曲がりなりにも自由惑星同盟に属する私が、そんな方とビジネスをして収益を上げる事に、良心の呵責に似たものがある。
フェザーンを中継地とした帝国との交易は、同盟の経済にとっても無くてはならないものになっている。同盟の経済にも一役買っているのだと、自分
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