194部分:第十三話 命を捨ててもその六
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第十三話 命を捨ててもその六
「気分転換にどうでしょうか」
「そうだな」
王もだ。その侍従の言葉に頷いた。
「私はどうしても悩みを抱いてしまう」
「ですから。ここはです」
「馬に乗りそしてだな」
王はまた言った。
「気持ちを晴らすとしよう」
「はい、では馬丁官に話しておきます」
「宜しく頼むな」
「では今より」
「馬に乗ろう」
こうしてだった。王は乗馬に向かうのだった。宮廷を出てだ。厩舎に向かう。そこにいたのは。
白いズボンに青い上着のすらりとした青年だった。その背丈は王よりも幾分低い。顔立ちは細く色は透き通る様に白い。
見事な、日の光に輝く金髪をなびかせ後ろで束ねている。青い湖の瞳は清らかな瞬きを見せている。鼻立ちはすらりとしている。
その彼がだ。厩舎の前にいた。王は彼を見てすぐに声をかけた。
「そなたは」
「はい、新しく馬丁官になった者です」
こうだ。王に一礼してから述べたのだった。
「ホルニヒといいます」
「ホルニヒか」
「リヒャルト=ホルニヒといいます」
それがだ。自分の名前だというのである。
「宜しく御願いします」
「リヒャルトか」
王はその名前に反応した。その名前こそがだった。
「そうか。そしてホルニヒだな」
「はい」
「供をするのだ」
王はだ。こうそのホルニヒに話した。
「いいな、これから馬に乗る」
「わかりました。それでは」
「馬はいい」
ふとした感じでだ。王はまた言った。
「わずらわしさを忘れさせてくれる」
「あの、陛下」
「いいのだ。供をするのだ」
王は今はこう言うだけだった。
「わかったな」
「それでは」
こうしてだった。ホルニヒもだ。
王の供をしてだ。外に出た。そうしてなのだった。
二人は湖のほとりまで来た。そこはだ。
澄んだ、青い世界だった。王はその静かな水面を見ながら。ホルニヒに話すのだった。
「私はだ」
「陛下は?」
「ただ。供にいたかっただけなのだがな」
ホルニヒに対してもだ。遠い目で話すのだった。
「彼とな」
「彼とは?」
「いや、いい」
言葉を途中で止めた。
「何でもない」
「左様ですか」
「それでどう思うのだ?」
王はホルニヒに顔を向けて尋ねた。見ればだ。その顔は整い女性の様に見える。しかしその顔はだ。それでいて青年のそれをたたえていた。
それを見てだ。王はまた話すのだった。
「この青のことだ」
「湖のですか」
「そしてだ」
さらにだというのだった。
「青をだ」
「青そのものですか」
「私は青が好きだ」
その色自体をだ。愛しているというのである。
「バイエルンの青を。それをだ」
「それをですか」
「この青は永遠にあって欲しい」
また
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