03.過去語
ー双子と王様ー
過去語ー双子と王様ー 六
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フランと琴葉が奇妙な約束を結んでから早一ヶ月。
「あ、リサちゃん、ユリちゃん。こんにちはー」
「コトっ! 相変わらず酷い怪我ね!」
「表情明るくなったね。未だ暗いけど」
「そうですかねー?」
アリサとユリアは、琴葉のことを"コト"と、琴葉はアリサのことを"リサちゃん"と、ユリアのことを"ユリちゃん"と呼び合うまでの仲に成長していた。
「段々、傷が深くなってきてるじゃ無い! 早く運ばなきゃ!!」
毎日の様に大きな怪我を為て、無理矢理躰を動かして花畑まで来て、岩の上で寝転がって力尽きている琴葉は、毎日の様にアリサかユリアに背負われ、K猫の拠点まで運ばれ、フランの治療を受けて、貸しを沢山作っている。
そろそろ、"白猫を潰して、K猫に来て"と言われたら従うしかない程の貸しが溜まっている筈だ。
「………ん。嗚呼、やあ! 琴葉君」医務室に着くと、既にフランは高いテンションで準備を為ていた。「また大怪我を為てくれたね!」
「はい。何時も通り、大怪我してきました」呆れた様な表情を浮かべながら、琴葉は言う。後ろでアリサとユリアも呆れた様な表情を浮かべながら、そそくさと部屋を出ていく。
「じゃあ、傷を見せてくれるかな?」満面の笑みを浮かべるフラン。
「…………その、今日は……一寸」だが、琴葉は少々困った様な表情を為ている。
「"一寸"って如何言うことだい? 私に口答え為て良いのかな?」
「い、いえっ! そうじゃなくて………今日はその……む、胸の辺りを切られて………」
しどろもどろ琴葉が言うと、フランは顔をポッと赤く染めて、両手を自分の頬に当ててきゃあきゃあ騒ぎ始める。
「うふふふ。可愛いねぇ、可愛いよ琴葉君。さて、如何やって治療してあげようかなぁ」
◇ ◆ ◇
また一ヶ月。
白猫内のイジメは、段々とエスカレート為ていく。
「あれ、コト、首如何為たの?」琴葉の頸にハッキリと残る、赤い手形。頸を絞めた様な痕の付き方を為ている。
「え? ……嗚呼、大したことは無いよ」
「琴葉君! 如何為てと言うか、如何やったらこんな事になるんだい!?」包帯を外した腕には、沢山の画鋲が深くまで刺さっている。如何やったとしても、此れまでやるのは有り得ない。
「あはは、大したことは無いですよ」
二週間。
「ちょ、コト! びしょ濡れじゃない!!」水に沈んだ後の様な程、琴葉は濡れている。躰の露出している部分には、ほぼ隙間無く抉った様な傷が付けられている。
「嗚呼、大したことは無いよ」
「琴葉君、一体君は何を為れているんだい……?」躰の彼方此方に残る、沢山の縄と鎖の痕。縄目まではっきりと分かる程、くっきりと残っている。
「大したことは無いですよ」
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