193部分:第十三話 命を捨ててもその五
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第十三話 命を捨ててもその五
「そこにまで確実になれる」
「それはいいことですね」
「はい、素晴しいことです」
「そこまで至りますか」
「それ自体はいいことだな」
それは王も否定しない。晴れやかな顔になった周囲に話す。72
「確かにな」
「確かにといいますと」
「そこにも何かありますか」
「ドイツがイギリスと肩を並べるまでになるのにも」
「そこまでも」
「強ければだ」
それでどうなるかであった。
「周辺国のいらぬ警戒を招く。そしてそれがだ」
「周辺国から敵視されるようになる」
「イギリスやロシアとですか」
「そうなるというのですか」
「そうだ、そうなる場合もある」
そこまではだ。断言しない王だった。未来まではだ。
「力が強ければそれでいいという訳ではないのだ」
「左様ですか」
「力があろうともですか」
「それでいいというものではない」
「そうでもないのですか」
「そうだ。確かに統一はあるべきだ」
王は話をだ。少しずつ戻してきていた。
「そこからが問題だが。しかしだ」
「そのプロイセンですね」
「プロイセンのことですね」
「そうだ、その中心となるプロイセンに媚びず諂わず」
そして最後の一つだった。
「憎まずだ」
「その三つをですか」
「バランスを取っていきますか」
「これからは」
「そうあるべきなのだ。私はプロイセンに対してどの行動も採らない」
王の考えはそこにあった。
「今度の戦争でもだ」
「いよいよはじまりますが」
「オーストリアについてですね」
「そうして今もですか」
「そうされますか」
「そうだ。私は今は動かないでおきたい」
遠くを見る目で顔をあげて。そうして語った言葉だった。
「そしてだ」
「そして?」
「去りたいものだ」
今度はだ。こんなことを言うのだった。
「もうな」
「去りたい?」
「ミュンヘンからでしょうか」
「この町から」
「そうだな。この町からもだな」
それをだ。否定しなかった。
「もうこの町には。私は」
「そう仰らないで下さい」
「陛下、それはです」
「なりません」
周囲がだ。すぐに彼を止めた。
「この町は陛下の町なのです」
「バイエルンの首都です」
「ですから。それはです」
「仰らないで下さい」
「わかっている。しかしだ」
それでもだとだ。王は寂しい言葉でだ。それで話すのだった。
「私はもう」
「ここはです」
侍従の一人がここで王に言った。
「馬に乗られてはどうでしょうか」
「馬か」
「はい、馬です」
乗馬に出てはどうかというのだ。王は乗馬をよくしている。他には泳ぎもだ。王は身体を動かすことも好んでいるのである。
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