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緑の楽園
第三章
第30話 戦闘
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、傷口が開いたんだ? 腹だと止血しづらいから背負ったら危ないね。巫女さん、担架はある?」
「はい、今すぐ用意します。人も呼んできます!」

 巫女はバタバタと走っていった。

「カイル、ごめん……俺、お前が……せっかく……色々教えてくれたのに……全然生かせなくて……みっともなくて……本当に申し訳ない……」

 町にいた頃、カイルに体術も教わっている。
 せっかく教わったことを、実戦で生かすことはできず。一方的にボコボコにされた。
 そして敵も呆れるくらいの見苦しい態度を取って。
 思い出したら無様すぎて涙が出てきた。

「そんなことはどうでもいいよ! オレのほうこそごめん。こんなことになってたなんて全然知らなくて。院長の実家までクロが来てくれて。慌てて一緒に来てみたんだけど、なかなか兄ちゃんが見つからなくて。そうしてたらすぐ前の建物から巫女さんの悲鳴が聞こえて、どうしたのって聞いたら『手伝って』って…………遅くなってごめん」
「なんでお前が謝るんだ……。助かった。ありがとう」
「うう……ごめん……うっ」

 カイルも泣いてしまった。何も悪くないのに。

 カイルとクロは俺を探してくれていたのだ。
 そしてちょうどこの建物の前にいたときに巫女の悲鳴。俺は運がよかったのだと思う。

 しかし、あの巫女。
 「手伝ってくれ」と言ったということは、俺を助けるつもりだったということになる。
 棒を持っていたが、この倉庫の中か外にあったものを適当に武器代わりにしたのだろうか?
 もう戻って来ることはないと思い込んでいたことを、申し訳なく思った。



 ***



 輿のような豪華な担架が準備された。
 俺はそれに乗せられ、巫女に連れてこられた四人の運搬要員によって運ばれることになった。

 助かったという安心感のせいもあるのだろうか。揺られながら、徐々に気が遠くなってきた。

 ――あ。

 大事なことがあった。
 失神する前にお願いしておかないとまずい。

「カイル……いるか?」
「うん。いるよ。大丈夫? どうしたの?」
「頼みが……あるんだけど」
「何でも聞くよ。言って」
「ヤハラが……スパイだったというのを……陛下に……伝えてほしい」

 ヤハラがスパイであったという事実を、城の人はまだ知らない。
 彼がそのまま帰城した場合、何をしでかすかわからない。
 城のみんなの身が危ない。
 そして証拠隠滅を図る可能性もある。
 高級参謀三人は、専用の仕事部屋がある。ヤハラの部屋には、敵組織の内部情報をつかめるモノがあるかもしれない。それを処分されてしまうおそれがある。
 できるだけ早く、国王に伝えたほうがよいだろう。

「わかった。すぐ行ってくるよ!」


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