第三章
第30話 戦闘
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この巫女、とんでもない悲鳴をあげているわりには、普通に戦っている。
これが彼女の戦い方なのだろうか。
女子の剣道みたいなものなのかもしれない。あれも聞き方によっては悲鳴に近い。
ヤハラは棒に慣れていないのか、完全にかわしきれず、今度は左肩に命中した。
命中部位の関係で回転する体。バランスが崩れ、少し右肩が突っ込むような姿勢になる。
その瞬間にクロが飛びかかり、右腕に噛み付いた。
「くっ」という声が漏れ、ヤハラが持っていた剣が床に落ちた。
反対側の手を使い、クロを懸命に引き離そうとする。
クロは振りほどかれたが、その隙に、巫女が悲鳴とともに追撃の一撃を入れた。
それは腹部へとまともに入り、ヤハラは後ろの壁まで吹き飛んだ。
カイルの猛攻は続いていた。
内容は圧巻だ。おしらく技術、スピード、パワー、すべて上回っている。
俺と手合せをしてくれていたときは、だいぶ手加減していたのだろう。
短剣で受け切るのは難しいと思ったのか、タケルはフットワークを使ってベクトルをずらし、圧をまともに受けないようにしようとした。
しかしカイルの技術はそれを許さない。動きを的確に読み、自分もフットワークを交えて追撃した。
必死で受け続けるタケルの表情は、かなり苦しそうに見える。
カイルは剣を使いながら、今度は足技も出した。タケルの足にローキックを入れたのだ。
足は予想できなかったのか、タケルはまともに喰らってふらつく。
その隙に、カイルは再度踏み込んだ。
なんとかそれを受けたものの、跳ね返せないタケルの体が、後ろに反る。
そこからカイルはさらに一押しすると、今度はミドルキックを繰り出し、彼を蹴り飛ばした。
「がはっ」
タケルは後ろの壁に激突。
短剣が飛び、床に倒れていた俺の体の近くまで転がってきた。
「……退くぞ」
「は……はい」
ヤハラが撤退を口にし、小ぶりな灰色の球をズボンのポケットから出した。
そして歯でピンのようなものを外し、それを部屋の中央に投げた。
――あ、これは。
俺がそう思った瞬間、ポムッという膨張音がし、部屋が煙だらけになった。
煙玉だ。
またたく間に、視界がゼロになった。
「わっ! 何だこれ」
「キャアアア! 何ですかコレは?」
煙が晴れたときには、ヤハラとタケルの二人はいなかった。
そして部屋の隅の床に、四角形の大きな穴が空いていた。
そこから逃げたようだ。
「リク!」
「兄ちゃん!」
「お兄さん!」
視界が復活したと同時に、一匹と二人が俺のところに飛んできた。
「お、俺なら……大丈夫だ……」
「大丈夫じゃないよ! 血がすごいし……げ
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