192部分:第十三話 命を捨ててもその四
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第十三話 命を捨ててもその四
「王は媚びてはならないのだ」
「媚びない」
「そして諂わない」
「それが王なのですね」
「その通りだ。確かに皇帝の下にある」
それは否定できなかった。神聖ローマ帝国でもだ。皇帝は王に対して上に立つ。ローマ教皇と同じくだ。それだけの存在なのだ。
しかしだ。王はここでこうしたことも話した。
「だが。皇帝はだ」
「皇帝はですか」
「何と言われますか」
「皇帝は誰もがなることができる」
皇帝のその即位の話だった。
「ローマ帝国の頃からだ」
「誰でもですか」
「なることができる」
「そうだと」
「神聖ローマ帝国では選ばれていたな」
これは事実である。だからこそ選帝侯という存在がいたのだ。基本的に七人おり四人の大諸侯と三人の大司教からなる。ただしやがて実質的にハプスブルク家の実質的な世襲となってしまい選帝侯は帝国での大貴族の称号の様になってしまう。
「誰でもなれるのだ。だが王は」
「違う」
「そう仰るのですね」
「そうだ、違う」
王という存在についてはだ。どうかというとだ。
「王は血筋によってなるものだ」
「血筋ですか」
「それによってなるもの」
「それが王ですか」
「つまりは」
「私もまた然り」
他ならぬだ。彼もだというのだ。
「ヴィッテルスバッハ家の血があってこそだ」
「そうですね。それは確かに」
「陛下がバイエルン王であるのはです」
「ヴィッテルスバッハ家故」
「だからこそです」
「ホーエンツォレルン家も血筋は見事だ」
それは否定しないのだった。その血統はだ。
「だが。それでもだ」
「皇帝になるのはですか」
「誰でもなれる」
「そうだというのですね」
「皇帝には」
「そうだ。もっとも我が家は皇帝にはあまり縁がないが」
かつて神聖ローマ皇帝だったことはあった。しかしだというのだ。
「その皇帝の臣下となろうとも」
「臣下となろうとも」
「それでもですか」
「媚びてはならないのだ」
それはだ。絶対だというのだ。
「諂ってもならない。しかし」
「反抗もですか」
「それもよくないのですか」
「そうだ、それもあってはならない」
どちらもだ。王は否定するのだった。
「今議会も臣民達もプロイセンを嫌っているがだ」
「それもまたですか」
「危ういですか」
「そうですか」
「最早プロイセンの勢いは抑えられない」
王はさらにこんなことも話した。
「やがてイギリスやフランス、ロシアと並ぶ国になるだろう」
「我がドイツがそうなりますか」
「あのイギリスと肩を並べる」
「そしてロシアとも」
「そうなりますか」
「ドイツには底力がある」
王もまたそのことを見抜いていた。彼はドイツそのもののことをだ。ビ
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