魔の谷攻防戦
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後方に逆さに落馬し、肩を地面に打ち付けた。
チャンス!
私は止めを刺すべく、走る。
「兵団長を守れ!」
敵兵の声が響き、数人の歩兵が、私の行く手を遮った。
さっきのように跳び越えるには、助走が足りない。
もう少しなのに!
歩兵達の槍と盾を斬り飛ばし、強引にかき分ける。
兵の隙間から見えたローラントは、副官らしき兵士に肩を支えられ、後方に引きずられていた。
歩兵をあっさり蹴散らす私の姿を見て、彼らの表情に、明らかな焦りの表情が見える。
周囲の兵士達は、指揮官を逃がすべく、慌てて道をあけていた。
狭い山間道に、これだけ大勢の兵士がひしめき合っているのだ。
簡単には逃げられない。
私は走った。
「一度、下がって体勢を立て直すぞ! 全軍後退っ! 急げーっ!」
副官が必死にが叫んだ。
このままでは、兵団長を討ち取られる危険があると判断したようだった。
後ろの大軍が瞬く間に後退していく。
その間、歩兵数名が、私の追撃を食い止めるべく残り、必死に抵抗を続けた。
それらを夢中で斬り倒しきった時には、残る敵の大軍は、遥か視界の向こうに消えていた。
静寂が訪れる。
た、助かった……?
私は、魔力剣を消し、その場にへたり込んだ。
危機が去ったことをすぐには実感できなかったが、直後に、味方の大歓声が私を取り囲んだ。
すげえぜ、英雄だ、まるで軍神だ、等々、称賛の言葉が飛び交っていた。
私は、戸惑いと照れが混じった表情で、周囲を見渡した。
味方の受けた被害は、決して少なくないようだったが、生き残れたことが奇跡のようなものだ。
ネモが寄ってきて、私の頭に手を置いた。
「無茶のし過ぎだ。本気で、肝を冷やしたぞ」
そう言う彼は、怒りというより、安堵の表情を浮かべていた。
「心配かけてごめんなさい」
私が上目遣いでそう言うと、彼は、私の頭を優しく撫でた。
「お前が無事で良かった」
あなたのおかげだよ、と返した。
彼の盾の援護がなければ、私の体はとっくに槍で貫かれていたはずだった。
私を守るために、彼も必死に動いてくれたのだ。
これは、私達2人で得た戦果だった。
部隊長が、敵が戻る前に撤退する、と宣言し、全員が速やかに準備にかかる。
私もへとへとになりながらも、ネモに支えられ、谷を後にした。
私達の部隊が上げた戦果は、同数以上の敵部隊の殲滅と、敵大部隊を一時撤退に追い込んだことだった。
部隊の規模を考えれば、破格の戦果と言って良いようだった。
谷を抜け、魔王軍の砦にいる主力部隊と合流、部隊長が状況を報告する。
最も少数であったはずの私達の部隊が上げた戦果に、驚きの声が上がった。
部隊長は、今回の戦いでの私の戦いぶりを隠すことなく、そ
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