魔の谷攻防戦
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た。
完全勝利と言っていい。
「敵がこんな場所まで進軍してきたとなると、待ち伏せのポイントに着く前に、再び接敵する可能性が高いですね」
「そうだな、作戦を変更して、我々は、一度、撤退するしかあるまい」
残りの2部隊の行方はわからないが、もっとも少数であるこの部隊ができることには、限界がある。
このまま、谷の入り口まで撤退することになりそうだったが──
「隊長! 大変です!」
敗走する敵に、矢を射かけていた兵士が戻ってきて叫んだ。
「何事だ?」
「敵後方に大部隊が! おそらく、ベスフルの主力部隊です!」
「なんだと!?」
山間道の陰から、隊列を組んだ騎馬の大群が、一斉に姿を現した。
「騎馬部隊、突撃ーっ!!」
突撃命令に合わせて、大勢の騎馬たちが、一気に駆けてくる。
狭い山間道では、敵部隊の全体は見渡せなかったが、聞いていた話だけでも、敵主力の人数は、今のこちらの千倍近いはずだった。
勝てるはずがない。
「まずい、全員撤退しろ! 今すぐだ、急げ!」
こちらの部隊長が叫ぶ。
だが、戦闘直後で隊列が乱れていた兵達に、すみやかに撤退する準備は整っていなかった。
敵の騎馬は、坂道をものともせず、丘を駆けあがってくる。
先頭にいた兵士数名が、真っ先に彼らの槍の餌食となった。
「チェント、逃げるぞ!」
叫ぶ、ネモにも余裕がない。
崖を行けば、登り切る前に無防備な背中を刺される。
山間道を行けば、騎馬のスピードを振り切れない。
一斉に逃げれば、仲間を犠牲にして、数人は生き残れるかもしれないが、何人が死ぬかはわからなかった。
「ネモ! 敵が!」
私は、叫んだ。
彼のすぐ横まで、敵の騎馬が迫っていたのである。
「うおっ!?」
彼は、辛うじて、手持ちのショートソードで、相手を槍を受け止めた。
「ネモ!」
「大丈夫だ、お前は先に逃げろ!」
ネモは、相手の槍を、歯を食いしばって受けながら、そう叫んだ。
その間にも、新たな騎馬が次々と迫り、味方の兵が倒されていく。
どうしよう?
ネモを置いて、先に逃げる?
私が逃げ切ったとして、ネモは、後から追いついてくる?
いや、この状況に取り残されて、生き延びられるわけがない。
そもそも、私が逃げ切れる保証だってない。
どうする? どうすればいいのか?
私は考えた。
そして、私は地を蹴った。
「ぐあっ!?」
私の剣の一振りを受けて、ネモと斬り結んでいた敵兵は、血を噴いて倒れた。
続けざまに、すぐ後に迫っていた、騎兵3人を立て続けに斬り裂く。
3人が、倒れたことを確認してから、私は、ネモを守るようにして、2本の赤い剣を構えて立った。
「チェント、何をしている! 逃げろと言っただろう!」
彼は
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