暁 〜小説投稿サイト〜
Evil Revenger 復讐の女魔導士
魔の谷攻防戦
[4/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
周囲を囲まれながら、私は傷一つ負っていない。
 浮遊石の盾は、魔法でただ強度を増しただけではなかった。
 それだけでは、この盾は、向けられる敵意だけを追って、どこまでも漂っていってしまう。
 私の周囲に張り付かせ、向けられる攻撃を的確に受け流すには、ある程度、魔法で制御してやる必要があった。
 今、それを行っているのは、私の後方に控えているネモだった。
「いずれは、盾の制御もお前1人でこなせるようになれ。そうすれば、お前は魔王軍最強の戦士になれる」
 それなら、今のままでもいいかな、と私は思っていた。
 今の私には、盾の制御と戦闘を同時にこなすだけの技量がない。
 だが、そうである限り、彼が守ってくれるのだ。
 これ以上の安心がどこにある?
 20人以上斬ったあたりだろうか?
 敵兵の攻撃が疎らになり、明らかに士気が乱れ始めた。
 ベスフル軍にしてみれば、敵1人に、何人が斬りかかっても、傷一つ負わず、味方が次々と倒れているのだ。
 恐怖を覚え、攻撃が鈍るのも、仕方ないことなのかもしれない。
「今だ、突撃ぃーっ!」
 後方から声がした。
 魔王軍の部隊長の声だった。
 敵の士気の乱れを突いて、一気に攻め落とす気なのだろう。
 兵士達が、ショートソードを抜いて、一斉に駆け下りてくる。
 ベスフル兵は、完全に浮足立っていた。
 こちらの兵士の攻撃で、敵兵は、次々と倒れていく。
 味方の優勢を確認してから、私は後方に下がった。
「ふう……」
 流石に少し疲れ、息を吐く。
 まだ、心臓がどきどきしていた。
 後ろから、肩に優しく手を置かれた。
 相手は、もちろん、ネモだった。
「ネモ、やったよね? やれたよね? 私」
 振り向き、笑いかける。
 考えてみれば、返り血に塗れた姿の笑顔というのは、少し怖かったかもしれない。
「ああ、よくやった。誰にも真似できない初陣だった」
 褒めてくれた。
 あなたのその言葉があれば、私は何とだって戦える。
 何人だって殺せる。
 私はそう思った。
 戦いは、終結しつつあった。
 敵兵の大半は倒され、敗走を始めた兵士達が、背中に矢を受けていた。
「お前達、よくやってくれた」
 戦いが決着すると、部隊長が私達に声をかけてきた。
「素晴らしい戦果だ。殆ど、お前達のおかげだ」
 出陣の時には、私達の能力に疑問を持っていたように見えた部隊長も、すっかり態度が変わっていた。
「全て、チェントの戦果です。私は僅かな援護しかしておりません」
 ううん、あなたがいたから、戦えたんだよ。
 私は心の中で言った。
「うむ、初陣でこの戦いぶりとは、この先が楽しみだな」
 すっかり機嫌をよくした部隊長は、そう言って笑った。
 この戦いで、味方への被害は、殆ど出ていなかっ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ