魔の谷攻防戦
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り血に染まり、赤い剣を振り回す私の姿は、相手にとって死神のようにでも写るのだろうか?
さらにもう2人を、同時に斬り伏せながら、そんなことを考える。
「落ち着け! 敵は1人だっ! 一斉に掛かれ」
気付けば、私は、敵部隊の真ん中まで斬り込んでいた。
完全に囲まれている状態である。
私を目掛けて、四方八方から、槍が、剣が、次々と繰り出された。
流石の私も、背中に目は付いていない。
正面と左右からの攻撃はかわせても、死角からの一撃には、対応しようもないはずだった。
私が正面からの剣を避けながら、左右の敵を斬り裂いた時、私の背中を狙って突き出された槍は、その体を刺し貫くはずだった。
大丈夫、ネモが守ってくれる。
だが、その攻撃は、飛来したそれによって、受け流されてしまった。
「なんだ、あれは!?」
その時、槍を防いだのは、私の周囲を漂う、3枚の赤い盾だった。
人の頭ほどの大きさを持つ3枚の盾は、私を包囲するように、フワフワと漂っていた。
私は振り向いて、動揺している兵士を、一振りで斬り裂く。
次々と上がるのは、敵兵の悲鳴や呻き声。
残る兵士達が、必死に動揺を抑え、反撃に転じてくるのがわかった。
だが、それらの反撃は、尽く、防がれ、かわされ、そして、かわし切れない攻撃は、赤い盾によって阻まれた。
凄い。
私は、自身がもたらした結果に驚いていた。
「チェント、これは浮遊石という石を埋め込んだ盾だ」
あの時、ネモが私に見せたのは、薄くて丸い木の板の真ん中に、宝石埋め込んだだけの、盾と呼ぶにはあまりに頼りない代物だった。
それは、何もしていなくても、フワフワと宙に浮き、漂っていた。
「この石は、魔王領周辺でもわずかしか取れない、貴重なものだ。向けられる敵意に反応するという特殊な性質を持っている」
彼が私に向かって、小石を投げつけてみせると、その盾が、間に割って入り、小石を防いだ。
それは不思議な光景だった。
「もちろん、こんな薄っぺらい盾では、敵の槍や剣を防ぐことはできない。だが、盾を重くすれば、浮遊石の方がそれを支えられない」
彼が提案したのは、その盾を、魔法で鉄より硬く強化して使うということだった。
私が魔力を込めることで、その盾は、赤く輝き、鉄よりも固くなる。
2本の魔法剣を呼び出し、3枚の盾を強化する。
それを同時にこなし続けることは、並の魔力ではできないことらしい。
大した苦労もなく、私はそれをやってみせた。
「俺には、この戦術を考えることはできても、実現はできなかったことだ。自信を持っていいぞ」
興奮気味に言ったネモの言葉を覚えている。
この初陣に私自身、今も恐怖が全くないわけではなかった。
しかし、この盾に守られる安心感。
これだけ
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