03.過去語
ー双子と王様ー
過去語ー双子と王様ー 四
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次の日、雨が降る中、アリサとユリアはこっそりと拠点を抜け出していた。
傘を持ち、急いで街を出る。雨の日なので、通行人は少なく、するりと街を抜けた二人は、昨日琴葉と戦った場所へ向かう。"リベンジ"なるものを仕掛けに行こうとしているのだ。
「今日こそ、絶対彼奴を打っ殺してやる!」
「うん!」
街を抜けると、広い草原に出る。此処は以前人間の街があったらしいが、人間が壊したらしい。
草原を走って行くと、白い花畑が見えてくる。所々赤い華が在るのは、昨日の血が未だ残っているからだろう。
「……居たっ!」
鬼は視力が良い。なので、かなりの距離が在る、昨日琴葉が座っていた岩に腰を掛ける人影をばっちりと捉えていた。
白い外套に、黒い髪。間違いなく彼奴だ、二人がそう考えるまで、そう時間は掛からなかった。
傘を其の場に投げ捨て、武器を構える。そして、残りの距離を一瞬で詰めて、武器を振りかぶったタイミングで、漸く影は二人の気配に気付いたのか、後ろを振り向く。
そして、二人は息を呑んだ。
「……っわ! 危な……」
「………ぁ、リサ、大丈夫?」
二人は岩に座っていた琴葉に攻撃すること無く、其の横を抜けていく。そして、如何にか止まったところで振り返り、琴葉の姿を凝視した。
頭から血を流し、切れた頬からも血が溢れている。一度血を吐いたのか、口の周りも赤く染まっていて、服も所々切れていて、其の奥にかなり深い傷が見える。白い外套を所々赤く染めていて、座っている石にもべったりと血が付いている。俯いた顔に、生気は感じられなかった。
「どーしたんですか? 折角殺せる機会なんですし、殺せば良いじゃないですか」
笑みを浮かべる琴葉だが、其の瞳は全く笑っていない。アリサとユリアは背筋をゾクリと震わせ、血塗れの琴葉を見る。
「し、死にかけのヤツを殺すわけ無いでしょう! 手当てしなさいよ!」アリサは人差し指を琴葉に向けて叫ぶ。「組織の幹部にも成って、如何為て怪我の手当てを為て貰ってないのよ!」
「え? 私、心配して貰ってるんですか? 敵から? ………はぁ、手当てはして貰いません。と言うか、為て貰えません。後、此れは戦闘で付いた傷では無いですし、大して事は無いので、一度も治療を為たことは無……わぁ!?」
反射的に手が出たのよ。アリサはそう心の中で言い訳を為て、琴葉を背負う。ユリアが驚いた様な表情を浮かべるが、直ぐに理由を察したのか、投げ捨てた傘を拾って、拠点へ向かって走り始める。
「なななななにしてるんですか!?」
「手当てするの! 手・当・て!! 例えアンタが敵でも、ぼろぼろの木乃伊を見せられたら何かしたくなるでしょう」
「ぼろぼろの……木乃伊? 私が………木乃、伊…………」
何とな
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