第三章
第29話 人間
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「この者が持っている思想は危険すぎる。生かしておいてもマイナスにしかならないだろう。ここで殺しておくことが、我々組織にとって最善だ」
ヤハラは続けた。
「死者が異議を唱えることはない。敵対の意思を明確にし、そして我々を攻撃してきたということにしておく」
「……この人は我々と同じ人間です。人間を自称する連中とは違います。しかも僕たちの遠い祖先なのでしょう? それを――」
「かまわない。組織の利が優先だ」
「…………わかりました」
程なくして、カチャカチャという金属音が近づいてきた。
俺はふたたび床に放り投げだされた。
そして、剣を鞘から抜く、短い音。
「手足を一本ずつ切り落としていくか。全部落とす前に失血死しそうだがな」
「や、やめ……ろ……」
「往生際が悪い。あきらめろ」
そのとき、ガタガタという音がした。
小さく、遠い音だ。
ヤハラの手が止まる。
「何だ? 誰か来たのか。声で感づかれたか?」
「いえ、ここの声はほとんど外に漏れないはずですが」
――だ、誰かがここを発見してくれたのか?
そして今度は、ボンという音がした。外の戸を開けた音か。
「誰か入ってきたか……。一人二人程度なら消すぞ」
「はい」
足音が近づく。割とはっきり聞こえる。
俺は、祈った。
戦える人でありますように。
そして助けてくれる人でありますように。
お願いします――と。
「あのー。誰かいるんですか?」
声と同時に、この部屋の戸が開く音がした。
ヤハラとタケルが構える。
現れたのは、若い巫女姿の女性だった。
彼女は一瞬、固まった。
そして、俺を見て……
鼓膜が破れるような悲鳴をあげながら、逃げていった。
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