第三章
第29話 人間
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をはじめとした一次エネルギーがなくなれば、文明の維持は困難。
どこかでそんな話を聞いた。
しかし、代わりになるエネルギーがないとしてもだ。
人間には口があるのだから、みんなで話し合って生活の水準を下げればいいだけのことだと思うのだが。
暮らしは不便になるだろうが、奪い合いで大ゲンカになるよりはマシだ。
「結局、文明を維持するに足る代替エネルギーは確保できなかった。残り少ない資源の奪い合いで、戦争に発展する恐れがあるとなり、世界の首脳は集まって会議を開いた。そして、以後の化石燃料の段階的な使用制限および、それに合わせた生活を送ることで一致した」
そうだよな、と思う。それが万物の霊長を称する生物らしい解決法だ。
ヤハラは説明を続けた。
「しかし、それぞれの国々は、表向きは会議の決定事項を守るふりをして、裏では制限を上回る量の化石燃料を産出し続け、備蓄を進めていった。今までの文明を自国だけは密かに維持しよう、とな」
「……」
「そして一国でそれがリークされると、それを引き金に各国は諜報員によるリーク合戦となり、世界中が非難し合う状態になった。そしてそれは収まることなく、そのまま世界中で資源を奪い合う戦争が始まった」
「そんなことで世界中に戦争が……」
唖然とした。自分でも気づかないうちに口が半開きになっていた。
それが本当なら、もうアホとしか言いようがないと思った。
だが、俺の時代でも似た話はあるかもしれない。
たとえば、核兵器などはそんな次元の話かもしれない。
口では皆、なくすべきだという。ならばさっさと一斉に処分すればいい。
だがどこの国も、自国だけは持っていたいと思っているから、いつまで経ってもなくならない。
自分たちだけ≠ヘ持っていたい。
自分たちだけ≠ヘレベルを維持したい。
そう考えているうちは駄目なのだろう。
「その戦争で、一定の水準を持つ都市はすべて破壊された。つまり世界の上位にあった人間は吹き飛び、消滅したというわけだ。
そして、地上ではまだ文明が未発達な、レベルの低い劣悪な者たちだけがわずかに生き残った。今この世界で人間を称している者たちは、その劣悪な者たちの子孫だ」
「……」
「しかし我々は違う」
ヤハラは力強くそう断言し、続けた。
「我々は事前に、戦火の及ばないところで密かにコロニーを築いていた。そこで世界の崩壊後も文明を継承し、それを保存してきた。つまり、我々こそが人類の歴史の本流なのだ」
――なるほど。
つまり、どこかは知らないがモグラのように隠れていたと。
この人たちが拳銃を持っていたりする理由がわかった。
それについては納得できた。
しかし……。
「あなた方のルーツはよくわ
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