プロローグ
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太陽も沈みはじめ、青空が青と赤が混じった夕日の独特の色へと変わる時間帯。
何度も何度も爆発音が響き、風が煙を運ぶという光景が繰り返されていた。
春の使い魔召喚儀式。
トリステイン魔法学院の進級試験で行われる、恒例行事だ。
すでにひとりを除いて、生徒全員が召喚と契約を済ませた。しかし除かれているそのひとりの生徒だけがまだ召喚すらできていなかった。
その生徒の名は、ルイズ。
なぜか魔法を使うと爆発するという失敗をしてしまう特異な存在で、基本的な魔法すら使えないことから魔法成功率ゼロ、ゼロのルイズという不名誉な二つ名をつけられてしまった高名な貴族の令嬢である。
すでに数えるのも億劫になるほどの爆発で、彼女の体は煤だらけ、口からケホリッと煙を吐いてついに膝をついた。
「ミス・ヴァリエール。今日のところはここまでにしましょう。」
見かねた教師コルベールが彼女にそう言った。
「いいえ! もう少し、もう少しだけ! やらせてください!」
しかしルイズは、ボロボロで疲れ切っているにも関わらず声を張り上げた。
誰が見てもルイズが限界であることは分かる。失敗ばかりのルイズに野次を飛ばすのも飽きてしまったルイズをゼロと見下す同級生達ですら、ルイズの痛々しい姿と諦めの悪さと根性にはからかう言葉すら出せなかった。
コルベールは、ルイズのいまだ折れぬ意思を宿した目に射抜かれ、仕方なくあと一回だけだと許可を出した。
ルイズは、最後のチャンスに残った力をすべて集中させる。
体中が痛むし、口の中は砂利や煤で今すぐうがいをしたいぐらいだ。
だが彼女は諦めない。
彼女が高貴な家系で生まれたにも関わらず、その名に傷をつけてしまうような落ちこぼれを挽回したいという彼女のプライドが彼女を動かしていた。
メイジ主義社会において、魔法がろくに仕えないメイジは、下手をすると平民よりも立場が悪くなる。
実際、ルイズは、魔法が成功した試しがないために、実家の平民の使用人にすら陰口を言われたことすらある。
負けたくない。
十代半ばの少女が背負った名家の令嬢という肩書と、メイジの血筋でありながら魔法を成功させたことがない自分を見下し馬鹿にしてきた奴らをギャフンと言わせてやりたい。
そのために努力してきた、成績も首席である。しかし魔法が使えない、たったそれだけですべての努力を認めてもらえない。
だからルイズは、なんとしても進級試験のサモンサーヴァントを成功させたかったのだ。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
ルイズは、最後の力を振り絞ってサモンサーヴァントの呪文を唱えた。
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