47話:適性
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を少し進むと、小さめの広場が見えてくる。いちばん奥まった所に屋外用のダイニングセットが用意され、陛下がお茶を飲みながら寛いでおられるのが目に入る。嬉し気にティーカップを少し持ち上げながらこちらに視線を向けられた。とはいえ、誤解を避けるために走り寄ることはできない。小走りにもならない様な速さで歩み寄り、跪く。後ろでザイ坊がそれに倣う気配を感じる。
「陛下、リューデリッツ伯をお連れいたしました」
「リューデリッツ伯ザイトリッツでございます。先ほどは直々の勲章授与、ありがとうございました」
「うむ。久しぶりの楽しい政務であった。超硬度鋼生産施設の火入れ式を思い出しながらお茶を楽しんでいたところじゃ。マリア殿の事は残念であったな」
「ありがとうございます。陛下のお言葉を聞けば、祖母も喜んだことでしょう。イゼルローン要塞司令官のお話を受けた際にこういう事もあろうかと覚悟はしておりました。お心遣いありがとうございます」
内々とは言え、近衛やお付きの者たちがおる。お忍びの様な話し方をすればあとあと不敬罪でザイ坊が責められかねぬ。言葉遣いでさえ自由にならぬとは、銀河帝国の皇帝の地位のなんと不自由なことか、御いたわしさを改めて感じてしまう。
「うむ。受勲の場ではいささか表情が芳しくない様子であったが、マリア殿の事以外にもなにか懸念があるのか?前進論は形をひそめたと聞いておるが。」
「は。臣は戦場で100万の敵を倒すことよりも100万の臣民を養う事に志向があると再度認識した次第で。今更ではございますが色々と考えております。今回の戦果も叛乱軍が犠牲を厭わぬ無謀な作戦を実行した部分が大きいのです。自軍の兵士の命を浪費するような場に出くわし、面喰っているのかもしれませぬが......」
陛下もザイ坊も生まれに縛られた人生を歩んでおる。ザイ坊の志向は軍人ではなく事業家であろうに。周囲から賞賛を受けても、本人の心は乾いていく一方なのであろう。それにマリア殿が身罷られた。もう本心から祝って欲しい方もおらぬ。そこでふと、このバラ園に思考が移った。陛下にとってのバラ園が、ザイ坊にとっての軍務なのかもしれぬ。
「そちが望むなら、退役を許可する勅命を出しても構わぬが、如何する?」
「陛下、それはさすがにお願いできませぬ。守りたい家族も、報いてやりたい部下も。戦場を共にした戦友も出来ました。それに生まれついての責任を果たされている方を存じ上げております。私だけ、楽隠居して生きたいように生きるにはいささかタイミングが遅いかと存じまする」
陛下は気遣うような表情をしながら退役の可否を問われたが、ザイ坊は少し間をあけてから、今の生き方を続けると答えた。この2人を見ていると儂まで悲しくなってくる。
「生きたい様に生きられぬか。何やら心当
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