初陣
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を踏みつける。
何度も何度も、踏みつけた。
痛い、苦しい。でも、放さない。
いつまでも、放そうとしない私の腕に、遂に兄は、剣を突き立てた。
激しい痛みに、手を放す。
剣が引き抜かれる。私は痛みに悲鳴を上げた。
だが、そこまで。
それ以上の私への追い打ちはせず、兄は、再びネモに向かって剣を振り上げた。
なぜ? 私が憎いなら、私を殺せばいいじゃないか?
あなたはなぜ、私を殺さず、苦しみだけを与え続けようとするのか?
剣が振り下ろされる。
もう止められない。
刃が、ネモを切り裂いた。
私の金切り声が響き──
気が付くと、見慣れない天井があった。
息が荒い。
汗がびっしょりだった。
「大丈夫か? チェント」
声の方に目を向けると、ネモがいた。
そうか、あれは……夢?
私は、反射的に、ネモに飛び付いた。
ネモは、驚いたようだったが、振り解いたりはしなかった。
温もりを、鼓動を確かめる。
彼は、確かに生きている。
あれは、間違いなく、ただの夢だったのだ。
私はテントの中にいた。
魔王領に侵攻してきたベスフル軍を撃つため、私達は、軍を伴って、出撃してきたのだった。
接敵ポイントまでは、まだ距離があり、ここは道中の夜営地の中だった。
この小さなテントには、私とネモの2人きり。
辺りは、まだ夜のようだ。
「どうした?」
彼の声は優しい。
「夢を見たの。あなたが、兄さんに殺される夢」
夢で本当に良かった、と彼を強く抱きしめた。
「初めての実戦を前に、少し緊張しているだけだろう。今のお前は強い。何も心配はいらないさ」
彼は、私を安心させるよう、そう言った。
私は、抱きしめていた手を放し、彼の眼を見た。
そして、確かめる。
「あなたも、死なない?」
「俺はお前のように強くはないが、お前が傍にいてくれれば、大丈夫だ」
言って、彼は私の頭を撫でた。
訓練の時は、変わらず厳しい彼だったが、それ以外の、2人きりでいる時の彼は、とても優しい。
そんな大切な彼との居場所を作っているのは、ここ魔王領。
そして、それを壊そうと迫っているのが、兄の率いるベスフル軍だった。
ベスフル軍は、降伏させたグレバス軍を吸収した連合軍となり、勢力を増して、魔王領に迫っているという。
絶対に負けるわけにはいかなかった。
もっとも、現時点で、魔王領内で、ベスフル軍に敗北する可能性を考えている者は、殆どいないようだ。
これまで、ベスフル軍と直接戦ってきたのは、魔王軍に従属していたグレバス軍であり、魔王軍は、一部の兵と兵糧を貸し与えていたに過ぎない。
ベスフルとグレバスの連合も、戦いを続けて疲弊した軍同士が寄せ集まったにすぎず、ほぼ無傷の
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