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永遠の謎
186部分:第十二話 朝まだきにその十二
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第十二話 朝まだきにその十二

「あの方ですね」
「そうだ、シシィだ」
 王は彼女のその仇名で言ってみせた。
「あの方は。それを理解しておられる」
「陛下と同じくですね」
「その通りだ。そして」
「もう一人の方は」
「プロイセンにおられる」
 その国の名前を聞いてだ。タクシスは眉を少し顰めさせた。その整った、ギリシア彫刻さえ思わせるその眉をである。
 そしてだ。そのうえでこう王に問うのだった。
「プロイセンにですか」
「そうだ、プロイセンだ」
 また言う王だった。
「あの国にだ」
「それはないのでは」
「いや、おられる」
 遠くを見てだ。王は語るのだった。
「あの国にもだ」
「その方は一体」
 誰なのか。タクシスは問わずにはいられなかった。
「どなたなのですか?」
「ビスマルク卿だ」
 誰なのか。王は話した。
「あの方だ」
「まさか。あの方が」
「違うというのか」
「はい、まさか」
 タクシスにはそれが信じられなかった。何しろだ。
 王が忌んでいるその武力によるドイツの統一、それを推し進めている人物こそがだ。鉄血宰相と言われているビスマルクに他ならないからだ。
 タクシスの驚きは当然だった。しかしだ。王はこう言うのであった。
「だがあの方はわかっておられるのだ」
「それでもですか」
「芸術もまたわかっておられる」」
 また言う王だった。
「あの方はな」
「そうなのですか」
「私はプロイセンのやり方は好まない」 
 それは絶対だという。どうしてもだ。
「だが。あの方はだ」
「お好きですか」
「私を理解してくれている」
 少なくともそうであった。ビスマルクは王の数少ない理解者の一人である。王を理解できるだけのものをだ。彼も備えているのだ。
「そうした方だからだ」
「だからですか」
「あの方は好きだ」
 また言う王であった。
「ドイツにとって芸術が必要であることも理解しておられるからこそ」
「ドイツの統一に芸術が」
「必要だ。そして」
「そして?」
「私はそれだけではなくなった」
 青い湖を見ていた。その向こうにある緑の森に青と白の山々も。
「この世は醜いもので満ちている。だが」
「だが?」
「その中に。真に美しいもの」
 それが何かもだ。王は語った。
「ワーグナーの芸術をだ。この世に実現させよう」
「ワーグナー氏のですか」
「ローエングリン」
 あの白銀の騎士の名前をだ。ふと呟いた。
「あの彼の世界をだ」
「この世にですか」
「あの世界は。誰にも汚されない世界だ」
 恍惚とした顔になっていた。恋する相手を見るような。
「あの世界をだ。白銀の世界を」
「ローエングリンだけでしょうか」
「いや、それだけではない」
 王はタクシ
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