第七十二話 大商人その八
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「それが終わってからになるから」
「待たせてもらうな」
「色々言わなあかんから一日かかるわ」
「じゃあ明日か」
「いやいや、それで明日は出発の用意や」
それがあるというのだ。
「屋敷のこともあるし」
「住んでいる家のこともか」
「そや、お金儲けたからよおさん人も雇ってる」
「へえ、そうなんだな」
「しかも犬や猫よおさん飼ってるしな」
「その世話のこともか」
「話さんとあかんから」
だからだというのだ。
「明日もな」
「出られないんだな」
「明後日や」
出発出来る日はというのだ。
「それまでうちのやってる店で楽しんでや」
「じゃあそうさせてもらうな」
「居酒屋でも何処でもな」
「カジノでもか」
「賭けるのが好きやったらな」
それならというのだ。
「それでうちの店にお金を落としてくれたらええ」
「その辺りしっかりしてるな」
「そやから儲けられるんや」
女は久志に笑って応えた。
「それもよおさんか」
「そういうことか」
「それでも詐欺はしてへんし金融の方もや」
「ヤミ金したいなことはしてへんか」
「それもかえってあかんからな」
そうした金融業のやり方もというのだ。
「悪どいと表でもや」
「目をつけられるか」
「評判も悪なる」
「それまずいよな」
「商売人にとってはな」
「評判、信頼はな」
「そや、そうしたもんがないとや」
それこそとだ、女も久志に話した。
「どうしようもない世界や」
「それが商売の世界だよな」
「悪どく儲けてもな」
「ばれたら終わりだな」
「絶対にばれる自信あったらやったらええ」
女は開き直った様に言った。
「悪い儲け方もな」
「絶対にかよ」
「そや、誰にもな」
「けれどそういう奴に限ってだろ」
「お天道様は観てるもんやからな」
「ばれるよな」
「そやから結局まずはや」
何といってもというのだ。
「商売は評判、信頼を気にしてな」
「やっていかないと駄目か」
「ほんまのド屑で出来る世界やないわ」
「ド屑にはか」
「ほんまのド屑は人の評判や信頼は気にせん」
一切、とだ。女は言い切った。
「それでも人は人、自分は自分やろ」
「相手がどう思っているかだよな」
「それでや、屑はそうしたことがわからんでな」
「他人から評判や信頼をなくしてか」
「商売も出来ん様になるんや」
「信用出来ない奴と仕事したくないしな」
「騙して来る相手と何で商売したい」
そうなるというのだ。
「自分もいきなり背中から切りつけられたら敵わんやろ」
「ああ、そんなことはな」
久志もその通りだと答えた。
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