184部分:第十二話 朝まだきにその十
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第十二話 朝まだきにその十
「青い花は好きだ」
「陛下はいつも青を愛されていますね」
「バイエルンの色だ。それに」
「ワーグナー氏の色ですね」
「ワーグナーは青だ」
これがだ。王がイメージするワーグナーの色なのだ。
「その青なのだ」
「バイエルンの色でありワーグナーの色であるからこそ」
「私は青を愛する」
いとしげにだ。花を見ながらの言葉であった。
小さいその花は長身の王から見ると実に小さい。しかしであった。
その小さな一輪の花を手にしてだ。王はさらに言うのだった。
「永遠にだ」
「左様ですか」
「そしてだ」
ここで目を湖にやる。その向こうには緑の森がありさらに先には白と青の山々がある。そうした自然を見てだ。王はまたタクシスに話した。
「この自然だが」
「陛下は自然がお好きですね」
「好きだ。愛している」
実際にそうだというのだ。
「この自然の中にもだ。ワーグナーがある」
「この中にもですか」
「ローエングリンの世界もある」
「水の上を進むその騎士ですね」
「そうだ、こうした清らかな世界にだ」
まさにだ。その世界にこそだというのだ。
「ワーグナーはある。だが」
「だが?」
「この自然の中にも。一つないものがある」
その自然を見てだ。王はそこに一つのものを出すのであった。
「一つだ」
「その一つとは」
「自然とはまた違うものだが」
「ワーグナー氏の世界にあるものですね」
「そうだ、ある」
まさにそうだというのだ。
「それは」
「それは?」
「城だ」
それだというのだ。王は今その場所にはない城を見ていた。その目にだ。
「城がない。ワーグナーの城が」
「そういえばワーグナー氏の世界には」
「城があるな」
「はい、あります」
その通りであった。ワーグナーの世界には城もあるのだ。森や水と共にだ。城もなのだ。ワーグナーの中には存在しているのだ。
王はだ。今その城を見ていた。そのうえでの言葉だった。
「私はワーグナーと離れざるを得なかった」
「陛下、それは」
「わかっている。言っても仕方のないことだ」
止めようとするタクシスの言葉を受けてだった。
「だが。心はまだある」
「御心はですか」
「そうだ。それがあるからこそだ」
「どうされますか。それでは」
「私が。ワーグナーの世界を実現したいのだ」
こう話すのだった。
「是非だ。そうしたい」
「どうされるのですか。一体」
「自然の中の城だ」
それだとだ。遠くを見る目で話した。
「是非な。そうしたい」
「ですがそれは」
「実現できるものではないというのか」
「どうも私には」
わからないというのだ。彼はだ。
しかしここでだ。王はさらに話すのであった。
「何時
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