第三章
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「わしやないですよ」
「わしちゃいます」
「あっしの筈がねえですだ」
「わしがどうして大国屋さんに入られるんですか」
「そんなこと出来ませんよ」
こう口々に言うのだった。
「確かに素晴らしいものと聞いてますが」
「一万両の価値と聞いてびっくりしましたし」
「欲しいと思いました」
「けれどどうして盗めるのか」
「見張りもいるらしいのに」
「これはな」
五人の話を聞いてだ、綾乃は襖の向こうで芥川と中里に言った。
「あれだけ聞いたらな」
「全然な」
「わからんな」
二人もこう綾乃に答えた。
「誰が犯人か」
「全然な」
「何か五人共無実に思えるし」
「逆に盗んだ様に思えるわ」
どちらにも思えるというのだ、それは綾乃も同じで二人にこう言った。
「うちもや」
「そうか、綾乃ちゃんもか」
「誰が犯人かわからんか」
「こっちの世界では下手人か」
「そう呼ぶか」
「その下手人が誰か」
まさにというのだ。
「ほんまにわからんわ」
「僕もや」
中里もこう言った。
「誰が犯人や」
「そうか、実は僕もな」
芥川もこう言ったのだった。
「怪しい奴はおるけどな」
「それでもやねんね」
「四智星の一人の自分でもか」
「ああ、はっきりとは言えん」
断言は出来ないというのだ。
「僕もな、しかし喜久子ちゃんは警官で太平洋の治安を預かってる身や」
「そやからか」
「あの娘やとか」
「そや、絶対にや」
まさにというのだ。
「真犯人をこの場で見付けてる、それで今言うわ」
「このお白洲で」
「そうしてくれるか」
「絶対にな」
芥川は断言した、そのうえでお白洲を見ていた。白洲では五人の下手人と思われる者達が口々に自分は盗んでいないと言っていた。
だが彼等が言い疲れて喋るのを止めた時にだ、喜久子は言った。
「獣使いの清原半三郎」
「へ、へい」
「そなたが盗んだな」
大柄で如何にも柄の悪そうなゴブリン族の彼を見て言うのだった。
「そうだな」
「滅相もない、あっしは」
「そなた獣使いであるな」
彼の職業のことを言うのだった。
「そうであるな」
「それが何か」
「そなたの使っている獣の種類を言うのだ」
「猿にフクロウに烏に鼠、あと狼や蝙蝠も」
「その蝙蝠は大蝙蝠ではないか」
「な、何故それを」
蝙蝠のその種類を言われてだ、清原半三郎はギクリとした顔になった。声もそうなっていた。
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