第九章
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「そうします」
「わかった、君の考えはな」
片平は表情を変えない、勇吉に毅然として応えただけだった。
そしてだ、彼にこう言ったのだった。
「話は終わった、ではこの店の食事と酒を楽しもう」
「あの、食事とですか」
「酒をな」
「ですが」
「料亭は何の為に入る場所だ」
にこりともせずだ、片平は勇吉に告げた。
「料理と酒を楽しむ為ではないのか」
「その通りですが」
「ではだ」
「これよりですか」
「君も楽しめ。いいな」
「わかりました」
「君が若し奥様を幸せにしたいと思うならだ」
やはりにこりともせず言う、声の調子も変わらない。
「食べることだ」
「そうして栄養を摂ることですか」
「脚気の話は聞いているな」
「どうもあれば白米ばかり食べているせいの様ですね」
勇吉はこのことは医師として答えた。
「そのせいでなってしまう様ですね」
「その様だな、そして労咳もな」
「あれも栄養が悪いとなりやすいです」
「先々代は脚気、先代は労咳で亡くなられている」
「そのこともあってですか」
「若し君が奥様を幸せにしたいならだ」
心からそう考えているのならというのだ。
「わかるな」
「はい、まずはですね」
「食べることだ」
そこからだというのだ。
「そうしてよい身体でいることだ」
「だからですか」
「食べることだ、いいな」
「わかりました」
勇吉は片平の言葉に頷き彼と共に料亭の馳走を食べた、その食べっぷりは食欲はなかった様だがそれでも片平の言葉を聞いたせいかしっかりしたものだった。
勇吉と料亭で話した次の日にだ、片平は宮田家の人達に集まってもらってだった。そうして先代の遺書を出した。
それからだ、二人のそれぞれの言葉を伝えた。
そうしてだ、彼は自分の前に集まっている人達に自分の言葉を告げた。
「遺書にある通りにです」
「三年ですか」
「先代の死から三年が経った時にですか」
「はい、認めてはどうでしょうか」
こう言うのだった。
「奥様のお言葉も中井君の言葉もです」
「今聞いた通り」
「片平さんがお話された通りですか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「お二人にそこまでの覚悟があるのなら」
「三年ですね」
「三年経ってから」
「認めるべきと考えています」
これが片平の考えだった。
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