第五章
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「幸せなのよ」
「家庭円満で趣味を楽しめて」
「それでよ」
「そういうことなのね。じゃあお母さんも」
「幸せよ。ちゃんと健康でしかも家族は平和でそれで」
ここでこのことを忘れない由貴だった。
「毎日じっくり寝られて」
「それが一番でしょ、お母さんは」
「そう思うのね」
「そうとしか思えないわよ、今日もぐっすり寝るんでしょ」
「お父さんが帰ったらね」
その時にとだ、美香子は娘に答えた。
「そうするわ」
「遅くても十時には寝てるわね、最近」
「六時までぐっすりよ」
それまで寝るというのだ。
「そうするわ」
「そうよね、寝られたらなのね」
「お母さんは幸せよ」
「それじゃあ」
「これからも寝ていくわ」
「それでなのね」
「幸せだからね」
「幸せは些細なのはわかったけれど」
小雪は母の言葉を聞いてそれでどうかという顔になってまた言った。
「お母さんの幸せは相変わらずね」
「寝てばかりっていうのね」
「そうよ、本当に寝道楽ね」
「それがいいからね」
「だからなのね」
「もうそれで満足しているわよ」
今の家庭の環境でじっくり寝られているので、というのだ。
「何も不満はないね」
「寝られるだけで」
「充分よ」
「何かそれ聞いたらお母さんのお友達のご夫婦の人達も」
しみじみとした口調になってだ、小雪は呟く様にして述べた。
「お母さんもね」
「どっちもっていうの」
「趣味はそれぞれでも」
「幸せだって思ったのね」
「そうよ、幸せで誰にも迷惑かけてないし」
フィギュア集めも睡眠もというのだ。
「いいわね」
「そうでしょ、じゃあお母さん今日もじっくり寝るからね」
それで幸せだからだとだ、由貴は笑顔で言った。
「それが楽しみよ」
「全く、よく寝るわね」
「それが一番楽しいからね」
由貴の返事は変わらなかった、そうしてだった。
由貴はこの日もぐっすりと寝た、昼寝もしていたし彼女にとっては満足のいく幸せな一日であった。
しかし後日また美香子に会ったがこんなことを言われた。
「毎日寝てばかりだとぼけない?」
「それうちの娘にも言われたけれど大丈夫よ」
美香子にもこう返した。
「頭を休めて脳細胞壊れないから」
「だからなのね」
「大丈夫だからね、これからもね」
「毎日ぐっすり寝るのね」
「そうしていくわ」
寝道楽を変えるつもりはなかった、そうして美香子と彼女の夫のフィギュア集めにはエールを送るのだった。
夫婦で些細に 完
2018・2・20
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