180部分:第十二話 朝まだきにその六
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第十二話 朝まだきにその六
「それにだ。このことがだ」
「このことが」
「どうなるのですか」
「我が国の信頼を損ねますが」
「それは間違いありません」
「今はそうだろう」
また、だ。王の言葉にあるその醒めたものが強くなった。
「だが。やがては」
「やがてはですか?」
「変わると」
「そう仰るのでしょうか」
「この戦いは必ず起こる」
王はこのことも確信していた。絶対だというのだ。
「だが、だ」
「だがですか」
「それでは一体」
「どうだというのですか」
「多くの言葉とは違いだ。すぐに終わる」
その戦争がどうなるかもだ。話すのだった。
「その時にわかる。何もかもがな」
「オーストリアが勝たれればです」
侍従の一人が危惧する声で述べた。
「その時は誰もが陛下を蔑まれます」
「そうです。そうなればです」
「間違いなくそうなります」
他の侍従達も話していく。その通りだとだ。
「ですがそれでもですか」
「司令官には就任されませんか」
「どうしても」
「何度も言うが私は戦いは嫌いだ」
また言った王だった。これは本音でもあった。
「だからだ。私はそれは受けない」
「では。代わりの方を立てるしかありませんね」
「そうですね。それでは」
「王家の方から」
「申し訳ないがそうしてもらおう」
王はここでは申し訳なさも見せた。だがそれでもだった。
完が絵を変えずにだ。また話すのだった。
「私は出ない」
「王である陛下は」
「決してですか」
「そしてだ。今はだ」
王の言葉が変わった。前を見てだ。こう周囲に話した。
「音楽にしよう」
「ではワーグナーをでしょうか」
「あの御仁の音楽をですか」
「聴かれるのですか」
「そうされますか」
「ピアノを頼む」
それでだというのであった。
「曲は。オランダ人だ」
「序曲でしょうか」
「それをですね」
「そうだ、それだ」
まさにだ。その曲をだというのである。
「それを頼む。今の私だ」
「今の?」
「今のといいますと」
「それは一体」
「彷徨っている」
こうだ。暗い目になって述べた王だった。
「彷徨っているのだ、彼と同じ様にな」
「オランダ人とですか」
「あの彼と同じく」
「そうした意味で。そうだな」
王は青ざめた顔になっていた。その浮世離れした顔でだ。彼は言うのであった。
「オランダ人なのだ」
「オランダ人は亡霊です」
「呪われた存在です」
侍従達は王の今の言葉に言う。それは受け入れられないというように。
「その彼と同じとは」
「幾ら何でも」
「不吉では?」
「そうです、不吉です」
「それはとても」
「そうかも知れないな」
王もその不吉なことは否定しなかった。し
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