第一章
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悲しい青髭
青髭の伝承がある、迎えた妻を次々と殺す陰気な男だ。だがこの青髭を思わせる男が今のフランスにいた。
マリー=デュマはパーティーで知り合ったシャルル=ド=ロシナンテと結婚する様になった。しかし彼の噂は決していいものではなかった。
友人達は結婚する前からマリーに言っていた。
「あの人いい噂聞かないから」
「これまで九回も結婚しているのよ」
「それでも九回共奥さんがすぐに死んでるのよ」
「全部事故や病死になってるけれど」
「これ絶対怪しいわよ」
「殺してるんじゃないの?」
その彼がというのだ。
「そんな噂もあるから」
「警察も怪しんでるし」
「だからね」
「あの人と結婚することは」
「止めた方がいいんじゃ」
「けれどお話してみたら」
マリーはそのおっとりとした感じの垂れ目の黒い目でで友人達に話した、楚々とした色白の面長の顔で長くセットしてある髪の毛の色も黒だ、大きな胸が目立つ一六五センチ程の肢体は女優と言っても通用する程だ。ただし仕事は普通の大学職員で資産家のロシナンテは大学はマリーの大学に寄付もしていて彼がパーティーに呼ばれた時に声をかけられて交際がはじまったのだ。
そのロシナンテについてだ、マリーは話した。
「凄く優しくて立派なお考えを持っている紳士よ」
「それは表だけでしょ」
「裏の顔があるのよ」
「だって九回もよ」
「奥さんが結婚して一年もしないうちに先立つとか」
「絶対におかしいわよ」
「これは」
「それは噂でしょ」
マリーは友人達に温和であるが拒む顔でこの言葉を返した。
「あくまで」
「それはそうだけれど」
「奥さん九人も死んでいるのは事実よ」
「このことは本当だから」
「ちゃんとね」
「こんなこと有り得ないから」
普通ではというのだ。
「何で奥さんが九人も咲に死ぬのよ」
「それもどの人も一年もしないうちに」
「事故死だとか病死だとかいっても」
「絶対におかしいわよ」
「それであの人が殺しているっていうの?」
マリーは僅かであるがその顔に怒りを見せて友人達に問い返した。
「奥さん達を」
「そうよ、青髭みたいにね」
「実際にそうしたことする人いたわよ」
ここでこうしたことを言う友人がいた。
「結婚した人を次々と毒殺していく」
「そうした人がいたの」
「その人は二十人以上殺したらしいわ」
「人を殺すことが趣味の人間だっているじゃない」
別の友人がこう言ってきた。
「そうでしょ」
「そんな人もいるの」
「そうよ、ブランヴィエ侯爵夫人ね」
マリー達の国フランスの稀代の毒殺者だ、気に入らない者や財産を掠め取ろうと考えている相手を次々と毒殺していき最後は過酷な拷問で自白させられ処刑されている。
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