18部分:第一話 冬の嵐は過ぎ去りその十二
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第一話 冬の嵐は過ぎ去りその十二
「それでも。それが時として厄介なことになるかもな」
「厄介なですか」
「己の意志を持つのはいい」
それはいいというのである。
「しかしだ」
「それでもなのですか」
「そうだ、それでもだ」
また言う王だった。
「それが意固地になればそなたにとってよくないことになるやもな」
「よくないことに」
「よく聞いておくのだ」
我が子への言葉だった。
「そなたは見たところだ」
「見たところ?」
「人から嫌われる者ではない」
「そうなのですか」
「そなたをあまり見られはしなかった」
これは自分でも認める。しかしなのだというのである。彼もまた父として我が子を見ることは見ていた。そこから話すことだった。
「だが。その心根はいい」
「ですか」
「腹は奇麗でやましいことはない」
太子のその清らかさを知っていたのだ。
「意地も悪くない。他人を傷つけることは好きではないな」
「言葉にも気をつけているつもりです」
「他者を思いやることも王の務めだ」
彼は少なくともそれができているというのだ。
「それもな」
「それはわかっているつもりです」
「だからだ。そうしたことでだ」
人に嫌われないというのだ。
「それにその顔立ちだ」
「顔ですか」
「それもまた好かれるものだ」
太子の顔の整いは際立っていた。この世にあるとは思えないまでの、絵画にあるような美貌である。それはもうバイエルンだけでなく欧州中においても話題になっていた。
そのことからもだというのだった。
「だからだ。そなたはだ」
「嫌われはしませんか」
「それに自然と人を惹き付けるものも持っている」
今度はカリスマだった。
「だからだ。嫌われはしない。むしろ」
「むしろ?」
「誰もがそなたを好く」
そうだというのだった。
「そして愛するだろう」
「そうであればいいのですが」
「安心するのだ」
王の言葉は明らかに我が子に向けられたものだった。これまで親子の交流はほぼなかった。しかし今はそれが違っていたのだった。
そうしてだ。王はさらに我が子に話した。
「それでだが」
「それで、ですか」
「そうだ。そなたは王として相応しい者だ」
「そう仰って頂けますか」
「私もそう思う。必ずやバイエルンの、どいつの歴史にその名を残す」
それも感じ取っていたのだ。我が子のその資質を。
そしてである。そう話している間にだった。
上演開始の合図のベルが鳴った。それを聞いてだった。
「さて、それではだな」
「開演ですね」
「ローエングリン」
王は考える顔でその名前を呟いた。
「確かあれだったな」
「はい、白鳥の騎士です」
「姫の窮地を救う白銀の騎士か」
「伝説のあの騎
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