第六章
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「この江戸におる限りはな」
「わかり申した、では我等この江戸におる限り」
「悪人共からか」
「盗んでいきまする、さすれば今は」
「これでか」
「お暇させて頂きます」
「わかった、しかしな」
大岡は去ると己に告げた五人男にさらに言った。
「拙者は必ずだ」
「我等をですか」
「捕らえよう、ではな」
「またお会いしましょうぞ」
「その時は必ずと言っておく」
捕らえるとだ、大岡は五人男にこう返してだった。
そうして屋根と屋根の上を獣の様に駆けて去っていく彼等を見届けた。この日はこれで終わり大黒屋は裁きを受けることになったが。
大岡は奉行所でこんなことを言った。
「五人男は取り逃してしまった」
「残念なことに」
「そうなってしまいましたな」
「無念です」
「うむ、しかし次はな」
与力達に強い声で言うのだった。
「捕らえる、そしてな」
「そして?」
「そしてといいますと」
「あの者達は悪人しか捕まえぬと言っておる」
五人男のこの言葉のことも話した。
「それならばな」
「悪人がいなくなればですな」
「あの者達は盗みを働くことはなくなる」
「そう言われますか」
「左様、ではな」
それならというのだった。
「盗み自体を減らす為にな」
「悪人共を減らす」
「そうしていきますか」
「うむ、ご政道を正しくすれば」
それを行えばというのだ。
「悪人は減る、ならばな」
「はい、それでは」
「江戸の町のご政道もですか」
「正していかれますか」
「そうする、奉行としてな」
江戸の町を預かる者としてというのだ。
「そうしよう」
「それでは」
「これからはですか」
「そちらにも力を入れていかれますか」
「今以上に」
「そうしよう、悪人を減らすことはご政道の務め」
このことを今以上に強く思っての言葉だった。
「ならばな」
「五人男を捕らえることを進めると共に」
「ご政道を正し江戸の悪人達を減らす」
「そうしてあの者達の盗みも減らしますか」
「そうしていこう、拙者のやるべきことがわかった」
今はっきりとだ、そうなったというのだ。
「奉行としてな」
「江戸の町を正していかれますか」
「そうしていかれますか」
「うむ、何があろうともな」
大岡は与力達に強い声で答えた、そしてだった。
彼は江戸南町奉行としてその政に励んでいった、そうして江戸の町の治安を正し悪人達が蔓延らぬ様に法を正していった。こうして彼は名奉行と言われる様にまでなった。五人男を捕まえられたかどうかは伝わっていないが彼が名奉行であったことは今も伝わっている。
大岡と盗賊 完
2018・4・11
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