第二章
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「五人男に狙われるな」
「左様ですな」
「狙われるとなると」
「あの店程これはという家はありませぬな」
「今の江戸では」
「近々大黒屋に奉行所が入りな」
即ち南町奉行所が取り調べを行うというのだ。
「そしてな」
「そうしてですか」
「そのうえで」
「阿片のことを調べる、そうした話を流すとしよう」
こう言うのだった。
「すぐに店に入らずな」
「左様ですか」
「そしてですか」
「五人男が奉行所が大黒屋を捕まえる前に店で盗みをしようとする」
「そこをですか」
「大黒屋も五人男もな」
その両方をというのだ。
「そう仕掛けるか」
「その両方を」
「そうされますか」
「ここは」
「大掛かりにいく」
大岡は与力達に強い声で告げた。
「下手に小細工を弄してはな」
「気付かれて逃げられてしまう」
「だからですな」
「小細工を弄するのではなく」
「一気にですな」
「大黒屋も五人男も召し取る」
「そうしますか」
「是非な、ではその策の仕込みをはじめよう」
南町奉行所全体でというのだ、こうして大岡は与力達だけでなく同心達に対してもだった。
細かい話をしてだ、その後で江戸市中に噂話を流した。その噂話はというと。
「大黒屋に奉行所が入るらしいな」
「ああ、あそこは妙な噂があるからな」
「ご禁制の薬を売っているとかな」
「そうした噂が出ているな」
「それでか」
「お奉行自ら大黒屋に入られる」
「大勢の与力や同心達を集めてな」
そしてその下にいる者達もだ、南町奉行所全体で大黒屋を召し取るという話が江戸全体での噂になっていた。
その噂話にだ、まずは大黒屋がだった。
「ふむ、動きがか」
「はい、ありました」
大黒屋を見張っていた者、表向きは同心だが実は代々忍の家である者が大岡に話した。
「大黒屋において」
「阿片をか」
「どうやら店から密かにです」
「他の場所に持ち去ってか」
「はい、そして奉行所の吟味にです」
「かかららぬ様にするか」
「そうする様です」
「昼に動く筈がない」
大岡はこれはないと言い切った。
「昼に動けば人の目もある、怪しまれるもの」
「だからですな」
「夜にな」
「密かにですな」
「店から出してな」
「そのうえで」
「阿片を何処かに移す、そしてな」
大岡は同心にさらに話した。
「五人男もな」
「あの者達もですな」
「昼に盗む盗人はすりだ」
こうした者達だというのだ。
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