第三章
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「投げ捨てられたと」
「ゴミの様な有様だな」
「その様に殺されたと」
「随分言われておるな」
「その様に」
「弟は確かに身体が大きいが」
皇子は弟君のことも話された。
「兄弟で最もな」
「帝の皇子の中で、ですね」
「皇族で最も大きいか、とかく大きい」
このことは事実だとだ、皇子も言われた。
「しかし人間の大の大人を握り潰すまでには大きくない」
「普通の大きさですね」
「そうだ、私より頭二つ程か」
「皇子は普通位ですね」
「太子となられた兄上もな」
この方もというのだ。
「それ位だが」
「では皇子を握り潰すとなると」
「巨人ではないか」
それこそとだ、皇子は眉を顰めさせたまま言われた。
「有り得ぬ、絶対にな」
「左様ですね」
「そして私の手足を引き千切るなぞ」
「余計にですね」
「弟はどれだけ大きいのだ」
それこそ有り得ぬ位のものとだ、皇子は言われるのだった。
「一体」
「しかもその後で」
「薦に包まれてだな」
「投げ捨てられたとです」
「弟はそうしたことはせぬ」
双子の兄として小碓皇子と幼い頃から共にいてそのお人柄もよくご存じだ、それで皇子はこう言われたのである。
「武勇は立つが決して粗野ではない」
「そうした粗暴なことは」
「決してせぬわ」
断じてというのだ。
「何があってもな」
「ではこの話は」
「現に私はここにおってだ」
美濃、この国にというのだ。
「そしてだ」
「私めにお話して下さっていますね」
「それが何よりの証だな」
「皇子が生きておられて殺されていないことの」
「そして弟がそうしたことをする者ではないということのな」
「全ての証ですね」
「うむ、私が死んだという話も驚くが」
それでもとだ、また言われる皇子だった。
「弟に殺されたなぞな」
「よりですね」
「驚いたわ、しかし真実はな」
「今私が見ている通りですね」
「そうだ、私は今も美濃にいる」
皇子はその者にはっきりと言われた、そうしてこの時からも美濃の開拓に尽力されたがある日のことだ。
その美濃に小碓皇子が来られたので居に招かれて共に酒を飲みつつご自身が小碓皇子に殺されたという話をされた。
するとだ、小碓皇子も眉を顰めさせて言われた。
「実は私もです」
「そうした話をされているか」
「兄上をその様に殺されたと」
こう大碓皇子に言われた。
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