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堕胎坂
第四章
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 長い間この坂のことは東京で密かに噂になっていたがある時にこの噂に耐えかねたか女が出る坂のそこにある家の主が丁重に祓ってもらってからこの話はなくなった。今では東京の何処の坂なのかわからない。富阪にしても年老いた今では。
 今も友である小坂にだ、こう言うばかりだった。
「あの女を見たのは何処の坂だったか」
「もう思い出せないか」
「ああ、女の顔は覚えているが」
 それでもというのだ。
「もう東京の何処の坂だったかはな」
「それは覚えていないか」
「昔のことだからな」
 こう言うばかりだった、この坂も昔はそうした話があったことも今は誰も記憶から忘れ去ろうとしている。昔のことなので。


堕胎坂   完


                  2018・4・15
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