第二章
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「それで」
「そうかもな、しかしあんたそこで絶対に別所とか言わないな」
「わしは巨人が嫌いだ、祖父様も親父殿もな」
二人共というのだ。
「だから別所は言うものか」
「そうか、巨人は嫌いか」
「まず祖父様が戦争から帰ってきてその時の巨人のごたごたを見て嫌いになってな。今も自衛隊でそう言ってるさ」
「親父殿もか」
「ああ、親父殿は警察にいるがな」
陸軍にいた祖父とは違ってだ。
「署長をやってて新聞記者の素行をいつも見ていてな」
「嫌いになったんだな」96
「親父殿の署の管轄にあの朝とかいう新聞社があるんだよ」
「ああ、あそこか」
「あそこの記者は随分素行が悪くて偉そうでな」
「問題ばかり起こすか」
「そういう話を家でちらりと言ったりするしな、飲んだ時に」
それでというのだ。
「わしも巨人は嫌いだ」
「じゃあ国鉄か」
「そっちが好きだ、弱いがな」
それでもというのだ。
「国鉄だ、国鉄に乗ってな」
「そうして移動もするしか」
「わしはこっちだ、だから金田だ」
「成程な」
小坂も納得して頷いた、そしてだった。
二人で今度は酒を飲みはじめた、そうして次の日に。
富阪はその坂に向かった、だが一人ではなかった。
ある後輩を連れて行っていたがその後輩は彼に難しい顔で言っていた。
「先輩、この坂は」
「ああ、出るそうだな」
「それで有名ですよ」
こう彼に言うのだった、見れば面長でややひょっとこを思わせる感じの顔立ちで丸坊主にもみあげが目立つ。
「本当に」
「女の幽霊か」
「物凄いのが出るそうですから」
「何だ、祟るのか」
「そこまでは知らないですが」
それでもというのだ。
「物凄く怖いそうですよ」
「しかし祟るのか?」
「ですからそうしたことまでは知らないですが」
「そんな怖い奴が祟るなら噂に入ってるだろ」
坂の噂にというのだ。
「だったらな」
「祟ることはですか」
「それはないだろ、それにどうしても怖いならな」
富阪は後輩に笑って言った。
「坂にはわしだけが行けばいいだろ」
「先輩だけがですか」
「それなら祟るのはわしだけだ」
笑ってこう言うのだった。
「御前には関係なくなる、だからな」
「それでいいからですか」
「ああ、行くか」
どっちにしろという言葉だった。
「そうするか」
「どうあっても行かれるんですね」
「わしはな、じゃあいいな」
「先輩も度胸ありますね」
「これでも高校まで色々あったからな」
「柔道で、ですか」
「ああ、今もやってるがな」
部活でだ、富阪も小坂も四段でその腕はかなりのものだ。小坂は相撲においても無類の強さを発揮しているが彼は自分から喧嘩を売ったり弱い者いじめはしない。尚富阪もいじめとは無縁の男で
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