第二章
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彼は私をある場所に案内してくれた、そこは確かに日本の誰もが知っている場所だった。その場所はというと。
「東京タワーじゃない」
「そうだよ」
彼は私に気さくに笑って答えた。
「ここにね」
「青い海があるの?」
「そうだよ」
「あの、東京タワーっていったら」
私は眉を顰めさせて彼に顔を向けて言った。
「確かに日本人なら誰でも知ってるけれど」
「海はっていうんだね」
「全く関係ないじゃない」
そうとしか思えなかった、というか東京タワーに今こうして二人で来ている理由がわからなかった。
「何一つとして」
「それがあるから」
「本当に?」
「うん、だから中に入ろう」
東京タワーのそこにというのだ、タワーは今も赤と白のエッフェル塔そっくりのその姿を見せている。スカイツリーに東京一ひいては日本一の高さを譲ったけれど今もその立派な姿を見せている。
「これからね」
「それじゃあね」
「君は東京タワーに入ったことなかったわよね」
「この距離から見たことはあるわ」
これはある、それも二回位。
「けれど中に入ったことはないわ」
「じゃあ余計にいいよ。これからね」
「はじめて中に入って」
「海を観ようね」
その青い海をというのだ。
「空は暗いままだけれど海の分だけ随分気晴らしになる筈だよ」
「それはね」
私自身その通りだった。
「海も見たいし」
「青い奇麗な海をね」
「ここでどうして観られるかはわからないけれど」
それは今もだ、この場所にどう海が関係あるのか本当にわからない。
「それじゃあね」
「中に入ろうね」
こう話してだ、そのうえで。
私達は東京タワーの中に入った、私にとってははじめだった。そうして彼が私に案内してくれた場所は。
何と水族館だった、私は東京タワーの中のそれを観てびっくりして彼に言った。
「えっ、ここになの」
「そうだよ、水族館があるんだよ」
「そうだったのね」
「驚いたかな」
「だって東京タワーよ」
海とは全く関係ない場所だからだ。
「そんなところにあるなんて」
「設備があれば設けられるからね」
「水族館を」
「そう、だからね」
「それでなの」
「ここには水族館があるんだ、あとサンシャインにもあるから」
あそこにもというのだ。
「今度機会があれば行ってみようね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「ここが青い海なのね」
彼にこのことを確認した。
「そうよね」
「そうだよ、ここがね」
まさにという返事だった。
「青い海だよ」
「貴方が言ってた」
「ここがそうなんだ」
「そうだったのね」
「じゃあ今からね」
「水族館の中に入って」
「青い海を観ようね」
こう言って私の背中を声で押してきた、私も押されるのに
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