食事への誘い
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ので、ぜひお邪魔させていただきます」
「そ、そうか。それは楽しみだな」
さしても楽しそうではない表情で、アロンソが真面目に頷いて見せた。
+ + +
「ライナ、入りますよ」
「はい。どうかいたしましたか?」
扉に区切られた私室。
淡いブルーのシーツと几帳面に並べられた本棚には一切の飾りはない。
窓から入った光が、レースカーテン越しに室内を照らしていた。
立ち上がって母親を迎えるのは、これもシンプルなモノトーンのワンピース。
銀色の髪は背後で束ねられており、士官学校では見ることもない格好であろう。
室内のためか化粧など一切していないが、整った顔立ちが今は疑問を浮かべていた。
手元の分厚い本を畳み、細められる目が見るのは、リアナの手にあるドレスだ。
何度かパーティーに出席した際に見かけたものに似ているが、濃紺のそれは初めて見るもの。もう一方の手に持たれたネックレスに目をやってから、ライナは眉間にしわをよせた。
「お母さま。いい加減諦めてほしいと思慮いたします」
「話も聞かずに無粋ですよ」
「聞かずともわかります。私にはまだ早いと考えております」
「何を言っているの、ライナ。私がクエリオと出会ったのは」
「十六の夏なのは知っています。その話は何十回と聞きましたから」
「そう、ならわかるでしょう。決して早くはないわ。愛に年齢は関係ないもの」
力強く言った言葉に、ライナは小さく息を吐いた。
「端的に、お母さまの恋愛観は私に関係ないと申します。申し訳ございませんが、体調が悪くなりましたので、お断りしておいてください」
明確な拒絶の言葉に、リアナは諦めない。
「だめよ。今日来られる方は、クエリオの部下の方なのよ。つまり、あなたの未来の上司でもあるかもしれないのですからね」
リアナの言葉に、ライナは嫌そうな顔を強めた。
仮に今までのように母親の紹介であったならば、体調不良――あるいは、窓から逃亡といったこともできた。
だが、父親の部下であるならば、そうはいかない。
リアナの言ったように上官になる人間である可能性もあったが、何よりもリアナに強制させられた父親の顔まで潰すことになるからだ。
「相変わらず、いろいろ考えるのですね」
「ふふ。大人の知恵ね」
「端的に性格の問題と思慮いたしますが」
眉をひそめた姿に、音が鳴った。
来客を告げるベルの音だ。
階下ではメイドの声が微かに聞こえる。
「あら。早いわね――さ、早く着替えて」
「結構です。応対はしますが、それ以上をする必要性を感じませんので」
父親の顔を潰すのは避けたい。
だが、それで自分の意思を変えられるのはまっぴらであった。
第一と。
胸に抱いた分厚い本を微か
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