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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
食事への誘い
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たでしょう」

 総司令部で奮闘したヤンやワイドボーン。
 何よりも自らの策を信じて実行したスレイヤー。
 わずかでも欠ければ、今頃はトールハンマーの餌食だったであろう。
 我がことながら無茶をしたものだと思い、しかし、歴史を変えて助けられた事は誇らしくも思う。

 そのことを理解しているのは、アレスしかいないのであろうが。
 互いが紅茶をすする。
 良くもなく悪くもない普通の味で、口を湿らせれば、アロンソが紅茶を置いた。
「だが、表彰も考えれば悪くはない。君にとっては面倒かもしれないがね」

 静かな言葉に、アレスは否定の言葉を言わず、苦笑で返した。
「上層部と知り合えるという機会もあるが――君ならば上層部の見ることができるだろう」
「見る、ですか」
「ああ。誰がどんな意見を持っているのか――どんな意見が大半を占めているのか。それを見るということは決して悪い事ではない――特に君の生き方ならば」

 どのような生き方かは今更にアロンソは語ろうとも思わない。
 自らが心を動かされた。
 だが、それによって確実に敵も増えたはずだ。
 特に、今回ではビロライネンはアロンソとアレスを恨んでいるだろう。

 それが声として聞こえないのは、責任を取らされることなく昇進が決定したからだろう。
 わずかな沈黙は――しかし、目の前の優秀な青年には理解できたようだ。
「戦いが終わっても、戦いですね」
「仕方あるまい」

 大変だろうがと付け加えれば、アロンソは紅茶を口に含んだ。
「と。そんなことを言いに来たわけではなかったな」
「ええ。何かありましたか?」
 アレスが疑問を浮かべている。

 情報参謀時代のことであったならば、電話で済む話である。
 わざわざ艦隊司令部から離れた情報部から訪ねてくることはないだろう。
 首をかしげるアレスに、アロンソはしばらく紅茶をすすった。

 何かあったかと疑念を深めるアレスの視線に、紅茶を八割ほど飲み干してから、アロンソは口を開いた。
「マクワイルド大尉。来週は暇かね」
「え」

 間が抜けたような短音が漏れた。
 だが、しばらく考えて、頷いた。
「ええ。土日は休みですが」
「そうか、それは良かった……実は、だ」
 そこから残った紅茶をアロンソは一息に飲み込んだ。

 珍しくも緊張する様子に、アレスも逆に緊張する。
「君のことを妻に話したところ――来週に食事に招待してはどうかと」
「……食事ですか」
「ああ。予定があるならば、無理にとは言わないが」

 思わぬ言葉に、アレスは小さく笑った。
 緊張する理由はわからないが、実は恐妻家なのかもしれない。
 いつもと違うアロンソの姿に、笑みを浮かべたまま、頷いた。

「予定は入っていません
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