03.過去語
ー双子と王様ー
過去語ー双子と王様ー 三
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葉の傷は癒え、血が止まる。口に付いた血を拭い、高らかに笑った。「あははは! 終わりですか?」
たかが八歳の此の言葉を聞いて、頭にこない大人は居ないらしい。
挑発に乗った吸血鬼の貴族が、身体強化の能力を発動しつつ、琴葉に接近して剣を振る。だが、琴葉は短剣で剣を弾いて軌道を変え、空いた胴体に短剣を突き刺す。
「五割本気、【身体強化】」
次は貴族が周りを囲んで、一斉に斬り掛かる。幻術を遣い、琴葉を惑わせるが。
「六割本気、【能力消去】」
呆気なく幻術は解け、貴族達は重力に因って大きく吹き飛ばされる。風を操る能力を発動しようとする貴族の一人だが、能力が発動する事は無かった。
「七割本気、【精神操作】」
琴葉がパチンと指を鳴らすと、残った構成員達は一斉に呻きだし、血の涙を流す。自身の爪で自分に傷を付けたり、剣を腹部に刺す。中には、白い花の花弁を口一杯に詰め込む者も居た。
「八割本気、【空間操作】」
琴葉の背後に、黒い箱が現れる。そして、死体や、精神操作で苦しむ構成員達が其の箱の中に吸い込まれる。琴葉がぎゅうと手を握ると、彼等は悲鳴をあげながら、空間と共に此の世界から消された。
「九割本気、【能力具体化】」
残った人外の王族、そして貴族の躰から、飴玉の様な小さな球体が湧き出てくる。琴葉が手をパチンと叩くと、其れ等は硝子の様に割れ、消えていった。
「十割本気、【消滅】」
琴葉の手に禍々しい球体が生成される。一年前、鬼の街を消滅させた、彼の膜と同じ物。
其れを複数生成し、其れを全て投げ付ける―――
「筈ですが、止めましょう」球体は消滅し、琴葉の顔に貼り付けた様な笑みが戻る。「気にせずにやっていたら、残ったのは王族、貴族と……良いところの御嬢様ですか。良いです、見逃してあげますので、帰って良いですよ? あ、でも、後三十秒後、此処に残っている人を消しますので、注意して下さいねー! 行きますよ−。いーち、にー、さーん………」
残った者達は、短く舌打ちを為て、其の場を去って行った。
次は容赦しない。そう言い残して。
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