46話:要塞司令官
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従卒としてついていくのは無理がある。
「シェーンコップ卿、まずはお役目をしっかり果たそう。我らにできる事でまずはお役に立つしかあるまい」
「オーベルシュタイン卿は良いですよ。進路相談もしっかりして頂いてましたし、RC社の方でも活躍されていると聞いてますし」
声をかけてきたオーベルシュタイン卿は、RC社の事業の分析をしたり、奥様の事業にもあれこれと提案をしている。士官学校に進むか、経営系の大学に進むか悩まれていたが、閣下と相談して士官学校へ進路を決めたらしい。RC社の事業は軍関連の物が多いから、大佐くらいになっておくと外部との折衝に役立つとのことだ。
俺は幼年学校を出たら、陸戦隊の育成校を志望していたが、そんな話を聞いてから、まだ誰にも言っていないが士官学校を志望することに決めた。どうせなら役立てる場を広く持ちたいと思ったからだ。
「たまたま私の志向に合っていたというだけだ。それより、幼年学校の対象者限定とはいえ、ザイトリッツ様の日の演出を任されたそうではないか。卿はマナーのアレンジも得意だ。私はどうもそっちの方は型通りにしかできない。言わば閣下の名代だ。うらやましくないと言えば嘘になる」
そう、俺は閣下が留守の間、幼年学校在籍者の会食だけだが、もてなしの内容を考える事を任された。主賓は閣下のご兄弟方にお願いすることになるが、認められたようで嬉しかった。大奥様にも色々と教えて頂いたのだ。文句の付け所のないものにするつもりでいる。
そんな事を考えていたら、少し大きめの地上車が屋敷の門から入ってくるのが見えた。ロータリーに入り、玄関前で停車する。閣下が降りてこられた。すかさずカバンを預かる。俺が従士見習いを始めて最初に任された役目だ。疎かにするつもりはない。
一息つく間を置いて、晩餐が始まる。今日の前菜は少し俺の趣向を入れ込んだものだ。次に晩餐を共にできるのは2年先になる。ザイトリッツの日の演出を任された以上、ご安心頂く意味も込めてと、料理長に頼み込んだ。乾杯が交わされ、前菜が食卓に配膳される。何食わぬ顔をしていたが
「ワルター。今日の前菜は新しいアレンジだね。これなら演出の方も安心だ」
閣下が嬉しげに感想を話す。大奥様も奥様も、俺のアレンジだと気づいたらしい。柄ではないが少し照れてしまう。一日も早く、またこんな晩餐を皆で楽しめる日が来て欲しいと思う。
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