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Evil Revenger 復讐の女魔導士
ネモ
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モが立ち上がり、突っ込んできた。
「うおぉぉーっ!!」
 ネモは、雄叫びを上げて、ヘルハウンドの額目掛けて、剣を突き出す。
 その一撃を受けた獣は、遂に、沈黙した。
「お、お前ら、よくも、俺のヘルハウンドを……」
 ルンフェスが、震える声で短剣を構え、こちらを睨んでいた。
 ヘルハウンドの強さに慢心して、ロクな武器を持ってきていないのだろう。
 私達は2人は、剣を構え、彼を睨み返した。
 ヘルハウンドが仕留められる直前に横槍を入れれば、まだ勝負はわからなかったはずだ。
 だが、彼は機を逃した。
「くそっ、覚えていろよ!」
 捨て台詞を残して、彼は逃げていった。
 彼は、この日より、魔王領に戻れなくなり、行方をくらますことになった。
 ルンフェスが去り、静寂が訪れ、緊張が解ける。
 私は、ネモの胸に飛び込んでいた。
 そして、戸惑うネモに構わず、子供のように泣きじゃくった。
 一瞬戸惑った様子を見せた彼は、だが、ゆっくりと右手で、私の頭を撫でた。
「すまん、チェント。俺のせいで、とんでもない苦労を掛けた」
 ルンフェスの狙いは俺だったのに、お前を巻き込んでしまった、と彼は言った。
「違う! 違うの、ネモ!」
 そんなことはどうでもよかった。
 首を振り、泣きながら、私は言った。
「私、嬉しかったの。あなたに認めてもらえて、あなたが私を褒めてくれて、あなたが……」
 ──私を好きだと言ってくれて──
 それ以上は言葉にならなった。
 私は、彼の胸に顔をうずめて、声を上げて泣き続けた。
「……聞いていたのか?」
 彼は、困ったような、照れたような、そんな顔をしていた。
「……嘘じゃ、ないよね?」
 私は彼に確かめた。
 彼は、しばらくの沈黙の後、
「ああ……」
 強く、頷いて、確かにそう言ったのだ。
「私もあなたが好き!」
 はっきりとした声で、私は言った。
 彼の心に、しっかり届くように。
「私、頑張るから、あなたの期待に応えられるよう頑張るから、見捨てないでね」
「お前なら、大丈夫だ。俺が保証する」
 彼の手が、私を優しく包む。
 彼の胸に抱かれながら、私は思ったのだ。
 ようやく、私の居場所を見つけた。

 最初に出会ったとき、私のことをどう思っていたのか?
 のちに彼に聞いたことがある。
「出会う前は、親父のこともあり、憎く思った時もあったよ」
 彼はそう切り出した。
「だが、実際にあった時には、弱々しい、かわいそうな娘という印象しかなかったな」
 グレバス城の牢屋で会った時のことだろう。
 もう、ずいぶん昔のことのように感じた。
 だから、以降、お前を恨んだことは一度もない、と彼は言った。
「魔王様に、お前の教育を言い渡された時は、正直戸惑ったが、めきめき
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