ネモ
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めにと、持たされていた松明は、あの転落の際に失ってしまっていた。
今、私の手元にあるのは、一振りのショートソードだけ。
ここで夜明けを待つ?
いや、いつ獣に襲われるかもしれない、こんな場所で、朝まで過ごす勇気は、私には、とてもなかった。
足元に注意しながら、今までより慎重に、しかし、今までよりさらに必死に、道を探す。
辺りは、闇と霧で、目の前段差が、下りられるのか、崖なのかすらわからない、かなり絶望的な状況になりつつあった。
あれは……?
その時、遠くに、かすかに何かが見えた気がした。
目を凝らす。
あれは、明かりだ。
この霧の中でも、闇が明かりを目立たせてくれていた。
人がいる!?
私は、思わず駆けだした。
今いる位置から、遠く、少し低い場所に見える、明かりらしきもの。
その場所まで、一直線に道が通じている保障などないのに、そんな危険も忘れていた。
人がいるということは、道があるということだ。
これが麓に戻れる最後のチャンスかもしれない。
そう思うと、走るのを止められなかった。
幸運にも、その明かりの場所までの道を阻むものはなかった。
とはいえ、歩きやすいようなまともな道ではなく、私は、あちこちに出っ張る石に、何度もよろけながらも、その場所を目指し、坂を下った。
近づくにつれて、少しずつ、明かりが鮮明になっていく。
「あっ……」
坂道に足を取られて転ぶ。
なんとか、踏ん張り、転げ落ちることだけは、回避した。
ゆっくりと立ち上がると、まだ、明かりが立ち去っていないことに、ほっとした。
今度は、慎重に、ゆっくり歩みを進めていくと、その明かりが2つあることがわかった。
さらに近づくと、松明を持った2人が、向き合って、離れて立ってる姿が見えた。
私のいる場所から、2人の場所までは、建物の2階ほどの高さになっていた。
あれは……ネモ?
片方は、ネモだった。
私を探しに来てくれたのだろうか?
それは、ただの義務感によるものなのかもしれないが、それでも、私にはうれしかった。
すぐでも、近くまで行って声を掛けようと思ったことろで、もう1人の話す声が聞こえてきた。
「ようネモ、こんなところで会うとは、奇遇だな」
声の主は、あのルンフェスだった。
「お前がなぜ、こんなところにいる?」
「ただの訓練だ。今から戻るところでな」
そういうルンフェスは、随分と、疲れた様子だった。
この山は、いるだけで体力を奪われる。
訓練のために、長くここにいたというなら、頷ける話だったが、
「わざわざ、獣を連れて訓練か? ここは獣と散歩に来るところではあるまい」
獣……?
ネモの言葉にはっとして、ルンフェスの後方を見た。
ひっ……!?
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