第三十四話 夢魔の酒蒸し
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なたの夢! 私も一緒に戦うから、逃げるのをやめるのよ!」
「無理よぉ!」
「マルシル!」
「ひゃう!」
ファリンが無理矢理マルシルを止めた。
そして、抱きしめる。
「だいじょうぶ。だいじょうぶだからね。」
「お姉ちゃん…、あ…ああ。」
「っ!」
いつの間にか背後にあの魔物がいた。
飲み込まれそうになったが、ファリンは、すぐに抜けだし、マルシルを抱えて走った。
「うっ…!」
「きゃああああ!」
ファリンがふらつき、マルシルの悲鳴が木霊して、周りの本棚が揺らいだ。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ…。私はなんとも…。これは…。」
ファリンは、魔物触られた箇所が酷くただれているのに気づいた。
いや、違う。
ただれているのではない。
シワが……、これは。
「老化?」
「お姉ちゃんも…、私を置いていくの?」
「えっ?」
「私は、他のみんなと走る速さが違うって…。だから、これから先ずっと色んな人達を見送らないといけないの。みんな、私と一緒に走るのを諦めて、あいつに飲み込まれていく! パパも! ピピも! ライオスも! みんな、みんな! だから私は魔術をたくさん勉強したのに!」
「マルシル…。」
「それが…。」
泣き崩れるマルシルが自分が抱えている人形を見おろした。
「それが、ライオスを、こんな姿にしてしまったら…。私どうしたら…。」
よく見ると、その人形はどこかライオスに似ていた。
「これ…兄さんなの? マルシル…、あなたの不安は…、親しい人が、自分より先に死ぬことなのね?」
「ううぅ…。」
その時、魔物が通路の奥からやってきた。
「あ、あうぅ…。」
「マルシル。怖がっちゃダメ。怖がれば怖がるほど、アイツは、強くなるの。」
「そんなこと言われたって! どうしたらいいの!?」
「望むのよ!」
ファリンが、マルシルの両肩を掴んだ。
「あなたは、たくさん努力してきた。見て! この本棚を! 同じ学校に行ってた私の比じゃない!」
「ダメよ! 私の魔術は不完全なの! あの子の…本さえあれば…、私はもっと完璧に魔術を扱えるのに…。」
「それだよ! 望んでマルシル! 強く望んで! 恐れないで! 本を…、本を呼ぶの!」
「本を……?」
「マルシル!」
「あっ!」
ファリンが魔物に飲み込まれた。
「い、いや、いやああ!! ダメェェェェ!!」
魔物の中に手を突っ込んだマルシルがファリンを引っ張り出そうとして、別の物を引っ張り出した。
それは、本だった。一冊の。
その本の表紙にある模様の目が、ジロリッとマルシルを見た。
「あ、…わあああああああああああああ!!」
マルシル
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